インコタームズのFOB、FCA、FAS、CIFの違い【図解あり】

インコタームズのFOB、FCA、FAS、CIFの違い【図解あり】

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国際貿易において必須ともいえるのがインコタームズに基づく貿易条件の取り決めです。
インコタームズの各条件の中でも、特に海上輸送でよく使われるFOBと、その派生形と言えるFAS、FCA、そしてFOBと並んでよく使われるCIFについて解説します。

現在、最新版として使われているのはインコタームズ2020です。次の改訂(インコタームズ2030)は2029年末に公表される予定で、それまではインコタームズ2020が現行のルールです。

インコタームズとは

インコタームズ(Incoterms=International Commercial Terms)とは、国際貿易において発生する費用負担(運賃や保険料、関税など)と危険負担(事故等による商品の損壊や紛失リスク)を売主と買主のどちらが、どこまで負担するのかを明確にするために用いられる国際基準です。
国ごとの商習慣の違いから生じる誤解やトラブルを防ぐため、国際商業会議所(ICC)によって1936年に初めて制定されました。

インコタームズそのものは法律ではありませんが、売買契約に取り入れることで、その取引のルールになります。双方で誤解なく、スピーディーに交渉を進めるためには非常に便利な基準として、ほとんどの取引の条件がインコタームズに沿った形で取り決められています。

インコタームズは4つのグループに分けられる

インコタームズ2020の11条件の費用と危険の分かれ目

現在、最新版として利用されているインコタームズ2020には11種類の条件が設定されています。
各条件は、それぞれDDP、EXW、FOBというようにアルファベット3文字で表記します。
インコタームズの11条件はそれぞれの特徴ごとに、4つのグループに分けることができます。

  • Eグループ 費用負担・危険負担を買主側で引き受ける。「EXW」
  • Dグループ 費用負担・危険負担を売主側で引き受ける。「DAP」「DPU」「DDP」
  • Fグループ 費用負担・危険負担が売主→買主へ同じタイミングで切り替わる。「FOB」「FCA」「FAS」
  • Cグループ 費用負担・危険負担が売主→買主へとそれぞれ違うタイミングで切り替わる。「CIF」「CFR」「CIP」「CPT」

また、インコタームズの各条件は全ての輸送形態に適用できるものと、海上輸送にのみ適用できるものに分けられます。

  • 全ての輸送形態に適用可能 「EXW」「FCA」「CPT」「CIP」「DAP」「DPU」「DDP」
  • 海上輸送にのみ適用可能 「FOB」「FAS」「CFR」「CIF」

11条件それぞれの内容は、インコタームズとは?で一覧にしています。
それでは、Fグループのインコタームズ「FOB」「FCA」「FAS」について、また「CIF」との違いを掘り下げて見ていきましょう。

FOB・FCA・FAS・CIFの違い

はじめに、4つの条件の違いを表で比べてみましょう。

項目FCAFASFOBCIF
日本語名運送人渡し船側渡し本船渡し運賃保険料込み
使える輸送手段すべて(海上・航空・陸上・複合)海上・内陸水路海上・内陸水路海上・内陸水路
危険が買主に移る時点指定地で、買主が指名した運送人に引き渡したとき船積港で、本船の船側に置いたとき船積港で、本船に積み込んだとき船積港で、本船に積み込んだとき(FOBと同じ)
海上運賃などの主な運賃買主買主買主売主(仕向港まで)
貨物保険どちらにも義務なしどちらにも義務なしどちらにも義務なし売主が手配(最低限の補償)
輸出通関売主売主売主売主
輸入通関・関税買主買主買主買主
条件の後に書く地名引き渡しの場所船積港船積港仕向港

FOB

FOB(本船渡し)の費用負担と危険負担

FOBは「Free on Board」の頭文字をとった名称です。「本船渡し」と呼ばれます。
海上貿易において古くから行われていた商習慣に基づく条件であり、現在でも最もメジャーな取引条件のひとつとして幅広く使われています。

売主のコストとリスク

  • 梱包
  • 貨物を港まで運ぶ運送料、保険料
  • 船への荷の積込み
  • 輸出に伴う通関業務など

買主のコストとリスク

  • 海上輸送にかかる費用
  • 海上保険料
  • 輸入に伴う通関業務
  • 関税・消費税の支払いなど

FOBでは、貨物を船に積みこむまでの費用負担と危険負担を売主側で負担します。
貨物が本船に積み込まれた時点でコストとリスクが売主から買主へと切り替わり、それ以降の費用負担と危険負担は買主側で負担することになります。

売主は本船に積み込むまでのリスクを負うので、工場や倉庫から船積みまでの事故に備えて、「輸出FOB保険」をかけておくこともあります。見積書やインボイスには「FOB Yokohama Incoterms® 2020」のように、条件の後に船積港を書きます。

FOBとCIFとの違い

CIF(運賃保険料込み)の費用負担と危険負担

国際取引で取り決められる機会が多いFOBですが、FOBと並んでよく使われる条件に「CIF」があります。
CIFは「Cost, Insurance and Freight」の頭文字をとった貿易条件で、「運賃保険料込み条件」と呼ばれます。

売主のコストとリスク

  • 梱包
  • 貨物を港まで運ぶ運送料、保険料
  • 船への荷の積込み
  • 輸出に伴う通関業務
  • 海上輸送にかかる費用
  • 海上保険料など

買主のコストとリスク

  • 輸入に伴う通関業務
  • 関税・消費税の支払いなど

CIFだと、FOBで買主が負担した費用のうち、「海上輸送にかかる費用」と「海上保険料」を売主側で負担することになります。
ざっくり分けると、「FOB=買主側の負担が大きい取引条件」「CIF=売主側の負担が大きい取引条件」ということができます。

ただし、注意したいのはリスクが切り替わる時点です。CIFでも、リスクが買主に移るのはFOBと同じ「船積港で本船に積み込んだとき」です。海上輸送中の事故は買主のリスクになり、売主がかけた保険で買主が補償を受ける形になります。費用は仕向港まで売主、リスクは船積港から買主と、分かれ目が違うのがCIFを含むCグループの特徴です。Cグループの条件どうしの違いは、インコタームズのCFR、CIF、CPT、CIPの特徴を比較で解説しています。

FOBからCIFへの価格の組み立て方

FOB、CFR、CIFの価格は、工場渡し(EXW)の価格をもとに、売主が負担する費用を順に足して出します。

条件足す費用(架空の例)価格
EXW(工場渡し)—900,000円
FOB船積港までの運送、輸出通関、積み込み 100,000円1,000,000円
CFR仕向港までの海上運賃 80,000円1,080,000円
CIF貨物保険料 2,000円1,082,000円

貨物保険の保険金額は、CIF価格に10%を加えた額とするのが一般的です。保険料は保険会社の見積で決まります。外貨で見積る場合は、運賃や保険料を換算するときの為替レートも決めておきましょう。

数字はすべて架空の例です。

FCA

FCA(運送人渡し)の費用負担と危険負担

FCAは「Free Carrier」を略した名称です。「運送人渡し」と呼ばれています。
FCAは、売主が担う費用負担・危険負担は、買主が指定した運送人に貨物を引き渡すまでで、あとは全て買主の責任となります。
FOBよりも早い段階で責任が売主から買主へと切り替わるところがポイントです。

引き渡しの場所が売主の工場や倉庫の場合は、買主が手配したトラックなどに貨物を積み込んだ時点で引き渡しが終わります。それ以外の場所(コンテナヤードなど)の場合は、売主のトラックに載せたまま、荷卸しできる状態で運送人に引き渡した時点です。また、FCAは海上輸送だけでなく、航空便やトラック輸送にも使えます。

FCAはコンテナ輸送を想定して設定された条件です。
より具体的にいうならば、コンテナヤード(CY)内での危険負担について明確化したインコタームズだといえます。
コンテナ輸送の場合、荷物は売主から買主指定の運送人へと引き渡された後、一旦コンテナヤードにて保管されることになります。
もしもコンテナヤード内で何らかのトラブルが起こり、貨物が損傷を受けた場合、FOBだと貨物がまだ船に積まれていないため、条件上はその責任を売主がとることになります。
ですが、コンテナ輸送に関しては「コンテナヤード内のリスク管理は買主側で行う」という考え方が慣習としてあったために、相互の誤解をなくす目的でFCAが設定されました。

ICCでは、コンテナ輸送にはFOBではなくFCAを使うことを推奨しています。
とはいえ、長年の慣習からかコンテナ輸送であってもFOBが使われるケースも少なくありません。
コンテナ輸送でFOBでの取引を相手側からリクエストされた際には、コンテナヤード内の危険負担をどちらが担うのかを事前に明確にしておきましょう。

インコタームズ2020でのFCAの変更点

信用状(L/C)で代金を受け取る取引では、銀行に「本船に積み込んだこと」が記された船荷証券(積込済み船荷証券)を出すよう求められることが多く、これがFCAを使いにくい理由になっていました。
インコタームズ2020では、売主と買主が合意すれば、買主が自分の手配した運送人に指示して、貨物を本船に積み込んだ後に売主へ積込済みの船荷証券を発行させられるようになりました。なお、リスクが切り替わる時点は、これまでどおり運送人に引き渡したときです。

見積書やインボイスには「FCA Tokyo, Japan Incoterms® 2020」のように、条件の後に引き渡しの場所をできるだけ具体的に書きます。

FAS

FAS(船側渡し)の費用負担と危険負担

FASは「Free Alongside Ship」の頭文字をとった条件です。「船側渡し」と呼ばれています。
大型の貨物や木材などを船備え付けのクレーン等で積み込むような場合に採用される条件です。
FASは、貨物が船側に置かれた時点で費用負担と危険負担が売主から買主へと切り替わります。
積み込みについての責任を売主側で担う必要はありません。

ここで言う「船側」は、本船が横付けされた埠頭や、艀(はしけ)の上など、本船のすぐそばを指します。

Fグループの中では限定的なケースに対応した条件であり、FOBやFCAに比べると使われる機会はそれほど多くありません。

見積書やインボイスへの書き方

インコタームズは、条件と地名、そして版(Incoterms® 2020)をあわせて書きます。

条件書き方の例地名に書くもの
FCAFCA Tokyo, Japan Incoterms® 2020引き渡しの場所(できるだけ具体的に)
FOBFOB Yokohama Incoterms® 2020船積港
CIFCIF Los Angeles Incoterms® 2020仕向港

Fグループは売主側の地名、Cグループは仕向地側の地名を書く点が違います。版を書いておかないと、どの版の規則で取引するのかがあいまいになってしまいます。見積書、注文内容確認書、プロフォーマインボイス、コマーシャルインボイスで、同じ書き方に揃えておきましょう。

まとめ

インコタームズのFグループの中でも、特にFOBは海上運送において頻繁に利用されるため、貿易実務においてはまずは覚えておきたい取引条件です。
コンテナ輸送ではFCAが推奨されていること、CIFでもリスクが切り替わる時点はFOBと同じであることも、あわせて押さえておきましょう。

インコタームズは種類が多く、一見ややこしいようにも思われますが、各条件の内容自体はそれほど難しいものでもありません。まずはそれぞれの取引条件の内容を把握し、インコタームズに慣れることが貿易事務の第一歩と言えるでしょう。

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