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卸売業や小売業など在庫を抱える業種にとって、在庫を正しく評価することは経営の根幹に関わるテーマです。評価方法の選び方一つで利益額や税負担が変わるだけでなく、在庫の過不足を見極めて適正な仕入れ判断を下すうえでも欠かせません。
本記事では、自社の在庫を適切に評価する方法と実務上のポイントを解説します。正確な在庫評価をもとに、収益の最大化と欠品のない安定供給を両立させましょう。
(本記事でいう「在庫評価」には、会計上の評価方法と在庫状態の管理評価の両面があります)
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INDEX
企業にとって在庫評価が重要な理由
在庫評価は、「いま手元にある在庫でどれだけの売上・利益を見込めるか」と「次に何を・いくつ仕入れるべきか」を判断するための基盤です。適切なタイミングと方法で在庫評価を行うことで、具体的には以下のような効果が期待できます。
- 商品ごとの原価と市場価値を把握し、利益の出る販売価格を根拠を持って設定できる
- 値崩れや品質劣化が起きる前に、在庫を売り切る判断ができる
- 売上予測と照らし合わせて、仕入れるべき数量を精度高く見積もれる
- 利益率や回転率の高い商品を特定し、仕入れの優先順位をつけられる
在庫評価を適切に行うことは、「利益の出る価格で販売する」だけでなく、「顧客が求める商品を欠品なく届ける」ことにもつながります。販売機会の最大化と顧客満足度向上の両立に向けて、在庫評価は欠かせない取り組みです。
棚卸資産とは?多い、少ないどっちがいい?在庫の勘定科目での分類や評価額の算出ルールも、あわせてご参照ください。
在庫評価で使われる主な方法
在庫評価では、主に以下の7種類(原価法6種類+低価法)が用いられています。
- 先入先出法
- 総平均法
- 移動平均法
- 個別法
- 売価還元法
- 最終仕入原価法
- 低価法
どの方法が適しているかは、業態や商品の特性によって異なります。たとえば、消費期限のある食品や医薬品を扱う場合は「先入先出法」、数千点以上の商品を扱う小売業では「売価還元法」が選ばれる傾向にあります。
各方法の詳しい計算例や届出の手続きは、棚卸資産の評価方法|7種類の計算例や評価損が認められる具体例、届出と変更方法をご参照ください。
在庫評価で使われる主な指標
在庫の状態を客観的に把握するには、金額の評価だけでなく、いくつかの指標を組み合わせて分析すると効果的です。実務でよく用いられる代表的な指標は以下のとおりです。
| 在庫評価の指標 | 指標が示す意味と活用ポイント |
|---|---|
| 在庫回転率 | 一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す。金額ベースと数量ベースの2通りの算出方法がある
数値が高いほど在庫が効率よく販売されている。低い場合は過剰在庫や売れ筋でない商品の滞留を疑う |
| 在庫日数 (滞留日数) | 商品が在庫として保管されている平均的な日数を示す
日数が長いほど資金が在庫に固定され、キャッシュフローを圧迫する |
| 欠品率 | 在庫切れにより顧客に販売できなかった商品の割合
高いほど販売機会の損失が大きい。適正在庫の見直しや発注タイミングの改善必要 |
| 廃棄率 | 売れ残りや劣化により廃棄した商品の割合
高いほど仕入れや需要予測に課題がある。発注量の最適化で改善を図る |
これらの指標は単独で見るのではなく、複数を併せて確認することが重要です。たとえば在庫回転率が低く、かつ廃棄率が高い商品は、仕入れすぎの可能性が高いと判断できます。
在庫評価は、適切に行えば大きなメリットをもたらしますが、おろそかにすると経営に悪影響をおよぼします。メリットとデメリットの両面から、その重要性を確認していきましょう。
在庫評価を適切に行うメリット
在庫の状態を正確に把握できれば、以下のようなメリットが得られます。
- 値引きに頼らず適正価格で売れる商品が増え、利益率が高まる
- 売り切るべきタイミングを逃さず、売れ残りによる廃棄ロスを減らせる
- 在庫の過不足を把握できるため、過剰生産や仕入れすぎを防げる
- 余分な在庫が減ることで、倉庫など保管コストを抑えられる
- 売れ筋商品や新商品の仕入れと保管スペースを確保しやすくなる
これらは売上の増加とコスト削減に直結するだけでなく、顧客が求める商品を切らさず提供できる体制づくりにもつながります。
在庫評価を適切に行わないデメリット
一方、在庫を漫然と抱え続け、評価を怠ると、以下のような問題が生じます。
- 売れない商品が売り場や倉庫を占拠し続け、保管スペースを圧迫する
- 値付けの根拠が曖昧なまま安売りしてしまい、得られるはずの利益を逃す
- 販売の好機を逃し、最終的に廃棄せざるを得なくなる
- スペースに余裕がなく、需要のある新商品を仕入れられない
- 在庫が現金化されずに滞留し、キャッシュフローが悪化する
いずれも利益、資金繰り、成長機会のすべてに悪影響をおよぼす深刻な問題です。
【在庫の状態別】5種類の分類方法
在庫を適切に評価するには、まず手元の在庫がどのような状態にあるかを把握することが欠かせません。
在庫の状態は、大きく5つに分けられます。それぞれの特徴を理解し、自社の在庫管理に役立てましょう。
①適正在庫
適正在庫とは、多すぎず少なすぎず、需要に対してちょうどよい数量が保たれている状態です。
通常価格で販売できる商品の割合が高いため収益を最大化しやすく、同時に「顧客が欲しいときに欲しい商品を提供できる」状態でもあります。販売機会の損失を防ぎ、顧客満足度の向上にもつながる、最も望ましい状態といえます。
適正在庫の具体的な数量は商品や企業によって大きく異なります。適正在庫の考え方や計算方法は適正在庫とは?考え方と目安、計算方法と維持する方法を解説【在庫管理】で詳しく解説しています。
②余剰在庫(過剰在庫)
余剰在庫とは、画像など需要を上回る量を抱えてしまっている状態です。
発注量の見積もりが過大だった場合に発生しやすく、保管スペースの圧迫や余分な保管コストの発生といったデメリットを伴います。ただし、安定して売れ続ける商品であれば、一時的に発注を絞ることで適正在庫に戻すことが可能です。
問題は、余剰在庫の状態を放置すると次に解説する「滞留在庫」へと悪化してしまう点にあります。
③滞留在庫
滞留在庫とは、販売の見込みが立たないまま倉庫や店舗に留まり続けている在庫です。
余剰在庫の状態が一定期間続くと、滞留在庫として扱われるようになります。売上を生まないにもかかわらず保管コストがかかり続け、期限のある商品であればさらに「不良在庫」へと進むリスクを抱えます。
滞留在庫と判断する期間は商品特性に応じて各社で設定します。
一例として、食品は30〜60日、アパレルは90日以上動きのない在庫を滞留在庫とみなす運用が挙げられます。滞留在庫は「見切り品」として早めに値下げ処分するなど、損失を最小限に抑える対応が求められます。
④不良在庫
不良在庫とは、販売そのものが難しくなった在庫です。
この状態になると、費用をかけて廃棄するほかなくなるため、何としても回避したい事態です。不良在庫が生じる主な要因は以下のとおりです。
- 賞味期限切れ、消費期限切れ
- 品質の劣化や破損
- 不良品
- 翌シーズンには販売できない季節商品
このほか、長期間売れ残った商品や型落ち品が不良在庫に含まれるケースもあります。
⑤過少在庫(在庫不足)
在庫は多すぎるだけでなく少なすぎることもリスクになります。
欠品を防ぐために最低限確保すべき「安全在庫」の数量を下回ると、販売機会を逃すリスクが高まります。「在庫はあるが、まとまった注文には応じられない」という状態が典型例で、これを過少在庫と呼びます。
注意したいのは、期限のある商品を扱う場合、在庫数量が一見潤沢でも安心できない点です。期限が迫った商品の割合が高いと、ある時点を境に一気に深刻な在庫不足へ陥るおそれがあります。
過少在庫は、自社の売上を失うだけでなく、顧客の信頼を損ない、競合他社に販売機会を奪われる要因にもなります。発注量を調整し、常に安全在庫を上回る水準を維持することが重要です。
安全在庫については、適正在庫とは?考え方と目安、計算方法と維持する方法を解説【在庫管理】で詳しく解説しています。
余剰在庫、滞留在庫が発生する原因と対策
「余剰在庫や滞留在庫が出るのは仕方ない」とあきらめていないでしょうか。
少量であればともかく、まとまった量の在庫が滞留している場合は、必ず原因が存在します。原因を特定し対策を講じることが、健全な在庫管理の第一歩です。
ここからは、余剰在庫や滞留在庫の発生原因とその対策を整理して解説します。
余剰在庫、滞留在庫が発生する主な原因
余剰在庫や滞留在庫が生じる原因はさまざまですが、代表的なものは以下のとおりです。
- 需要に見合わない過剰な数量を仕入れてしまう
- 需要予測を誤り、想定したほど売れない
- 在庫数量を正確に把握できておらず、重複発注などが起きる
- 売り切るタイミングを逃し、セール後やシーズン終了後に在庫が残る
- 外部要因による予測し得ない、または予想を超える影響を受ける
- 品質トラブルにより返品が相次ぐ
これらの多くは、「正確な情報の不足」と「判断の遅れ」に起因します。逆にいえば、情報を正確に把握し、タイミングよく手を打てれば防げる原因が大半を占めます。
余剰在庫、滞留在庫を防ぐ有効な対策
原因に応じた対策を講じることで、余剰在庫や滞留在庫は着実に減らせます。以下の対策は、有効となる取り組みの一例です。
- 在庫数量をリアルタイムで把握し、定期的な棚卸しで実数とのズレを防ぐ
- 過去の販売データをもとに需要予測の精度を高める
- 発注点や発注量などの発注ルールを定期的に見直す
- 在庫の状態に応じて評価替えを行い、滞留品を早期に発見する
たとえば、売れ行きが天候に左右される商品を扱う場合は、民間気象会社の気象情報サービスを仕入れ判断に活用するのも有効です。需要予測の精度が上がり、過剰仕入れの防止につながります。
And余剰在庫、滞留在庫対策の基本となるのが、在庫数量の正確な把握です。これには在庫管理システムの活用が効果的です。
弊社が提供するクラウド販売管理 DEXTRE(デクスター)には在庫管理機能が搭載されており、遠隔地の在庫であってもパソコンやスマートフォンからいつでもリアルタイムに数量を確認できます。複数拠点の在庫を一元管理したい企業にも適しています。
在庫の評価替えを行うタイミングと方法
滞留在庫を抱えたまま帳簿上の価値を据え置くと、実態より資産が過大に計上され、正確な経営判断ができなくなります。適切なタイミングで評価替えを行い、帳簿価額と実際の価値を一致させることが重要です。
評価替えを検討すべき代表的なタイミングは、以下のとおりです。
- 商品本体や外装が損傷し、通常の価格では販売できなくなった
- モデルチェンジにより、旧モデルが現行価格では売れなくなった
- 流行に左右される季節商品で、翌シーズンも同じ価格で販売できる見込みが立たない
- 長期間店頭に並べても売れず、滞留が続いている
評価替えの手順は、まず対象商品の新たな評価額(時価や正味売却価額)を算定し、現行の帳簿価額との差額を求めます。この差額を「棚卸評価損」または「商品評価損」の勘定科目で費用として計上します。これにより、含み損を当期の損失として正しく反映できます。
なお、評価損の計上が税務上認められるには一定の要件があります。また、会計上は計上できても税務上は損金にならない場合があります。
具体的な要件や計算例は棚卸資産の評価方法|7種類の計算例や評価損が認められる具体例、届出と変更方法で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
【業種別】適切な在庫評価のポイント
在庫評価で重視すべきポイントは、業種や扱う商材によって異なります。
ここからは「卸売業」「アパレル」「小売業」「製造業」の4つに分けて、それぞれの特性を踏まえた在庫評価のポイントを解説します。
卸売業
卸売業の役割は、小売業へ商品を安定的に供給することです。そのため、扱う商品は多種多様になり、欠品を避けるべく種類・数量ともに豊富な在庫を確保する必要があります。
注意したいのは、売れ行きが鈍いからといって安易に取り扱いを中止しないことです。
小売業からの供給期待に応えられなくなり、取引関係そのものを損なうおそれがあるためです。また、品質を長く保てる商品については、短期的な売れ行きだけで評価替えを行わない判断も求められます。
一方で、需要の変動に迅速に対応できるよう、在庫管理システムを活用したリアルタイムな商品管理が欠かせません。
アパレル
アパレルの特徴は、SKU(在庫の最小管理単位)の多さです。同じデザインでも、サイズと色の組み合わせでSKUが10以上に及ぶことは珍しくありません。
さらに、売れ行きは特定のSKUに偏りがちです。在庫全体としては余っていても、人気のサイズや色が早々に欠品すれば、小売店や消費者の不満につながります。
加えて、季節やトレンドの影響で売れ筋が大きく変わり、通常価格で販売できる期間も長くはないのが実情です。事前に需要を予測し、好調が見込めるSKUは多めに確保する一方、シーズン終盤には早めの値下げで売り切るなどの販売戦略が重要になります。
小売業
小売業は、消費者の動向が売上にダイレクトに反映される業種です。
需要を正確に読み取って適切な数量を仕入れること、原型売れ行きの鈍い商品は早めに価格を見直して売り切ることが求められます。販売管理システムや在庫管理システムで在庫状況をリアルタイムに把握し、売りどきを逃さない体制を整えましょう。
なお、在庫回転率や在庫日数の適正水準は扱う商材によって大きく異なります。自社が在庫を抱えがちかどうかは、中小企業実態基本調査や業界団体の統計資料などから同業他社の数値と比較して判断することをおすすめします。
製造業
製造業では原材料、仕掛品、半製品、製品という複数の段階の在庫が存在し、それぞれを種類ごとに分けて評価する必要があります。
製品の需要を予測したうえで、適切な量の原材料を仕入れることが基本です。液体原材料の在庫評価では、蒸発による数量の減少にも注意が必要です。
在庫回転率の適正水準は業種によって差が大きいため、自社が属する業種の平均値と比較して、在庫の数量や保有期間が適切かを確認するとよいでしょう。
業種平均との比較には、小売業と同じく中小企業庁の中小企業実態基本調査や業界団体の統計資料などを活用するとよいでしょう。
特に食品製造業では、使用期限のある原材料がほとんどを占めます。
安全な製品を提供するためにも、使用期限を過ぎた原材料は確実に廃棄し、その際は「商品廃棄損」(原材料の場合は「原材料廃棄損」など)の勘定科目で会計処理を行います。
在庫の適切な評価は収益の最大化と顧客満足度の向上を両立できる
在庫評価は、利益や税負担、仕入れ判断を左右する経営の重要な取り組みです。
自社の業態や商品特性に合った評価方法を選び、在庫回転率などの指標で在庫の状態を客観的に把握することが大切です。余剰在庫や滞留在庫は原因を特定して早期に対策し、適切なタイミングで評価替えを行いましょう。こうした積み重ねが、収益の最大化と欠品のない安定供給の両立につながります。
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