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アパレル業界でDXが浸透しないのは何故?
『DX』
新聞やテレビ、WEBニュースでも最近よく目にする言葉ではないでしょうか。
Digital Transformation (デジタルトランスフォーメーション)の略語で、コスト削減や生産性の向上、顧客の行動や体験にWEBやデジタル技術を活用した新しいビジネスモデル、IT投資の拡大やシステムの刷新を実行する施策の総称です。
営業や生産管理、マーケティング、顧客対応といった企業経営のDX推進を、経済産業省が補助金などで後押ししていることもあり、DXは今、経済界で最もホットなテーマになっています。
とはいえ、業種によっては、なかなか進んでいない、活かせていないのが実情のようです。長らくアナログでの業務、取引が中心だった企業ほど、導入・移行に踏み出せず、旧態依然とした効率のまま、社内のクリエイティビティを発揮できていないのではないでしょうか。
特に、アパレル業界ではその傾向が顕著です。
目まぐるしい市場変化への対応が求められる現場では、なかなかDXへリソースを割けないことも影響して、商品の受発注、在庫の管理から、納品書や請求書といった帳票まですべて紙の書類で取引を行っている企業が今でも大半を占めています。
DXはペーパーレスだけを指すものではありませんが、今回はDXの最大障壁の一つ「紙の帳票」をどう電子化するか、電子化するとどうなるか、について、帳票管理が煩雑なアパレルメーカーを例に焦点を当ててみたいと思います。
紙の帳票、書類のいいところ・・・?
アパレルメーカーのジレンマ
アパレルメーカーでは実に多種多様な帳票、書類を使って取引や業務が行われます。
- 見積書
- 発注書
- オーダーコンファメーション(注文確認書)
- 一般的な請求書
- デポジット請求書
- バランス請求書
- 未納品リスト・未請求リスト
- パッキングリスト
- ピッキングリスト
- 納品書
- 委託納品書
- 消化仕入納品書
- 返品伝票
- 領収書
まだありますが、ざっと挙げてもこの数です。
海外と取引するアパレルメーカーは複雑な貿易条件があり、上記に加えて、コマーシャルインボイス、プロフォーマインボイスなど輸出入手続きに必要な書類をいくつも作成します。
受注から納品まで、これらの多くの帳票がワード、エクセルや手書きなどで作成され、取引先へと送られます。注文内容の変更や訂正も頻繁にあるので、その都度書き直して送ります。取引先ごとに掛け率や取引条件、支払い条件が違うため、個別の帳票を作成して、変更があれば書き直します。
パソコンで作成した帳票も、やはり最後は印刷して紙で発行します。かなり少なくなりましたが、FAXもまだまだ健在です。
さらに、日々大量に発行される帳票で、問題になるのは「保管」です。
どの帳票も5~10年は保管しますから、保管場所がオフィスに占める割合も年々広がって、ワークスペースを浸食していきます。取引先、バイヤーごとに各種帳票を集めて整理して、ファイリングするコスト、厳重に管理しながら保管するコストは計り知れません。
などなど・・・。
アパレルメーカーの帳票との戦いは終わることなく、受発注業務を担当する経理部門やアシスタントは数え切れない帳票作成に追われ、疲弊しながらも奮闘しています。
このような煩雑な業務に、ITやWEBを利用したソリューションが根付かない理由は、慣習や慣れているからだけではなく、煩雑といえども、臨機応変に書き直せる自由度の高さ、柔軟さがあるからです。
アパレルメーカーには、紙と同じくらいの使い勝手で、コストに見合ったシステムがこれまでなかったために、今日も新たな紙の帳票が作成されているのです。
しかし、ようやくこのジレンマに解決の道が見えてきました。
帳票を紙からオンライン化、電子化するメリットとデメリット
ここ数年の間に、複雑なアパレル業務に特化した受発注管理、帳票作成から在庫や入金の管理まで、まとめて一つのシステムでできるサービスがいくつかリリースされています。
中でも、導入コストが比較的安価で移行作業もかんたんなSaaS、クラウドタイプのバックオフィスツールに注目が集まっています。
とはいっても、帳票作成を紙から電子化、オンライン化するとなると、導入や移行に不安があります。
- 仕事内容が急にガラッと変わって、ついていけないかもしれない
- 新しいスキルを身につけないといけないかも?
- 費用は?毎月のコストは?
こういった疑問や課題を整理するため、帳票を電子化するメリットとデメリットに分けて考えてみましょう。また、デメリットの解決方法も合わせてご参考にしてみてください。
メリット
時間の有効活用
電子化するメリットは何といっても「時間」です。
取引条件や価格などが登録された取引先やバイヤーを一覧から選べば、あとはかんたんに請求書や納品書など、取引に必要な帳票が作成されます。
記入や印刷、書き直しなど、帳票作成に費やしていた時間が大幅に減った分、納期を短縮できたり、他の業務や顧客への対応にこれまでより多くの時間を割り当てられます。また、アイデアを練る時間、リソースが増して、ビジネスの付加価値、クリエイティビティやモチベーションの向上も期待できます。
経費削減
印刷するプリンター、紙やインクの購入費、保管場所の維持費、郵送費などが0円に。ペーパーレスの経費削減効果は絶大です。これらの経費で、受注管理システムの維持費にあててもお釣りが出るくらいコストカットが見込めます。
作業コストの削減
時間や経費と同じくらい、誰もが実感するメリットが帳票作成が圧倒的に「楽になった」ことです。
特に、アパレル業務に特化したバックオフィスツールは、アパレルで扱われる条件や項目が網羅されており、紙でできていたような柔軟さで、やり取りの途中で注文商品や掛け率が変更になってもスムーズに、かんたんに再発行ができると好評です。
データになった顧客情報、過去の取引は条件を入れたらあっという間に検索できます。保管場所まで行って探し出す紙の書類では実現できないスピード、効率です。問い合わせへの対応も早くなり、顧客満足度の向上も期待できます。
スキルや研修
様々な業界に向けたSaaSが登場したことで、帳票作成を含む受注管理のクラウドサービスも飛躍的に使いやすくなっています。画面を見ただけで次にする操作、始めたい作業がわかるようになっています。
後述しますが、アパレル業務に特化したバックオフィスツールは海外取引、貿易業務の帳票も充実しています。
特別なスキルや研修は必要ありません。
インターネットショッピングや、オフィスソフトの経験があれば、すぐに操作感をつかむことができます。
入力する項目は紙の帳票と同じ、受注管理に必要な帳票はすべて揃っています。後述しますが、アパレル業務に特化したバックオフィスツールは海外取引、貿易業務の帳票も充実しています。
デメリット
取引先やバイヤーの条件入力
これがアパレル系SaaSの最大にして唯一といっていい、手間のかかる作業です。
アパレル取引ならではの、顧客ごとに取引条件が異なるケースが大半のため、取引先ごと、バイヤーごとに掛け率や価格、ブランド、商品、通貨や言語などを登録します。
ただ、一度入力してしまえば次からはとてもスムーズに帳票を作成できます。変更があったタイミングで、変更したいところだけを変更すれば再発行でき、入力ミスを防止します。
導入費用
帳票の作成、管理の電子化は、それ単体で導入されるケースは少なく、一般的に受発注管理や生産管理のバックオフィスツールに含まれる形で導入されます。
導入費用や維持費は、機能や期間、業務の規模により異なります。例えば、アパレル業務に特化したバックオフィスツールDEXTRE(デクスター)は、年間契約なら月々20,000円で利用できます。導入費用や開発費用はありません。
情報漏洩やセキュリティは大丈夫?
帳票作成を電子化、オンライン化すると、顧客や自社の情報、取引内容は契約したサーバー会社のサーバー内に保存されます。定期的なシステムの保守点検、バックアップなどが行われますが、これまで社内で保管していた書類がデータとなって、自社以外で保管、管理される状態は、特に導入初期は心配になります。
SaaSを始め、クラウドサービス、WEBサービスの多くはユーザーとのオンライン間の情報のやり取り、技術的な内容、保存データなど、利用ユーザーの個人情報が外部から読み取られないように高度に暗号化した通信が行われ、セキュリティ対策が講じられています。
また、アクセス制限でデータを閲覧できる人を限定したり、いつ、誰がどの情報を閲覧したかを記録できます。
とはいえ、万一に備えたセキュリティの強化、紛失や情報漏洩の内部対策を決して怠らない、厳重な開発、管理体制の基準を設けている企業のサービスを選択することが重要です。
電子化した帳票作成はどんなことができる?
紙の帳票との違いは?
では、電子化した帳票作成は、具体的になにがどんな風にできるのか、アパレル業務向けのSaaSの受注管理ツールを例にいくつか挙げます。
紙の帳票作成との大きな違いは、自動で、またはかんたんな操作で直観的に請求書、納品書、貿易書類といった帳票を短時間で作成できることです。急な変更も、商品や掛け率など変更したい条件だけを変えれば新しい帳票が作成できます。どこをどんな内容に変更したか、履歴も残り、やり取りの流れがわかります。
書類のデータはサーバーに保存され、通信環境があれば、どこでも作成や確認ができるようになります。
発行できる帳票、伝票
商品管理や受注管理、オンライン展示会と同じツールの中で、各種帳票を作成します。アパレル業務のバックオフィスツールには特有の商取引、商習慣に合わせた帳票も作成できるようになっています。
どの書類も、取引先、バイヤーごとに違う取引条件(掛け率、卸値取引の特別割引率)や支払条件(締支払、前払金(デポジットなど)が自動で適用されて、作成されます。
- オーダーコンファメーション(注⽂内容確認書)の⾃動作成
- 受注内容の編集、再発行
- 請求書
- 締め⽀払いやデポジット請求書
- 納品情報をベースに締め支払いの請求書の作成
- 未納品リスト、未請求リストから請求書の作成
- パッキングリスト
- 納品書
- クレジットノート(バイヤー様の過払い管理)
- 修理代金や送料などの各種伝票(請求書に付与して金額の調整ができる)
- 変更履歴の保存と共有
ひとつの帳票をみんなが見える、わかる
スタッフ、チームのメンバーと帳票作成の情報を共有すれば、いつ、だれにどんな帳票を発行したのか、どこを変更したのかがわかります。
個別に作成して、把握していた紙の帳票作成では誤解や漏れが起こりやすかった、取引の進行状況の確認も短時間で、正確にわかるようになれば、スマートで付加価値の高いコミュニケーションが生まれる環境づくりにも貢献できます。
海外向けの帳票、書類作成
⽇本国内での取引と同時に、海外のバイヤーとの輸出取引に対応した帳票、貿易書類を作成できる機能も備わっています。
- 多言語、多通貨
- バイヤーごとに複数の⾔語、通貨で帳票を同時に発行
- 商品情報をもとにコマーシャルインボイスの発行
- パッキングリスト
- デポジット用のプロフォーマインボイス
- バランス用のプロフォーマインボインス
これらの書類は、商品ごとに設定した掛け率や特別割引率と、貿易条件(FOB、EXW、DDP など)、複数の支払い通貨、支払条件を組み合わせた価格が自動で計算されて作成できます。
まとめ
帳票作成のアナログからデジタルへの移行をきっかけに、受注管理ツールの導入や社内体制の見直しが始まり、コスト削減と、新しい人員配置で生まれた企画や施策が新規開拓、顧客満足度の向上につながった例もあります。
いつでもどこでも帳票が作成できる、受注管理ができるのがSaaS/クラウドのバックオフィスツールです。これまで機能が不十分だったアパレル業務の受注管理も、特殊な商取引に対応したツールが利用できるようになりました。
実務に沿った細かな条件を自由に設定できる柔軟さは、紙で作成する感覚に近く、ツールを使うストレスもなく、仕事が楽になったとのお声も聞きます。
リモートワーク、海外、出張先の仲間や顧客と情報や進捗を共有できるメリットを活かして、ビジネスの成長を加速させましょう。
※ 記事内に記載しております帳票を作成する機能には、DEXTRE(現在ベータ版)で実装中、実装予定の機能も含まれております。