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業務でシステムを長く活用していると、ハードウェアやOSのサポート切れなどのタイミングで新しいシステム環境へ移ることは必然的に起こります。
「システム移行」はこのような状況に対応する方法の一つです。新しいシステムへ移る方法はシステム移行の他にも「システムリプレイス」などもあり、これらの相違点を理解することも重要です。
この記事では「システム移行」について、詳しく解説します。どのような方法でどう進めるか、どのような項目に注意して進めるとよいか、詳しく確認していきましょう。
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システム移行とはなにか?
システム移行とは、現在使っているシステムを新しい環境に移すプロセスを指します。「システムのマイグレーション」とも呼ばれます。
一般的にはサーバー筐体など、ハードウェアが変わることが多いでしょう。OSやミドルウェアが変わる場合もあります。一方でシステムそのものは、多少の修正を行う程度でそのまま活用するケースが多いです。
システム移行を行うきっかけ
システム移行を行うきっかけは、以下のとおりさまざまです。
- サーバーOSやデータベースのソフトウェアがサポート期限を迎えた
- サーバーのハードウェアが老朽化、不調が続出している
- オンプレミスからクラウドに移行したい
- 移転をきっかけに、新しいサーバーで運用を始めたい
貴社が望まない状況でも、システム移行を迫られるケースがあります。事前にシステム移行について知っておけば、いざという時に備えられます。
システム移行に含まれる費用
システム移行には、以下の費用が含まれます。クラウドへの移行では1.の費用を抑えられます。
- ハードウェアの購入や設置に関する費用
- OSやミドルウェアのライセンス、およびセットアップ費用
- 移行先の機器のシステム設定費用
- データ移行の費用
- セキュリティ関連製品の設定費用
システム移行に必要な費用は、移行先のシステムや求める要件、運用規模などにより大きく異なります。
自社の公式サイトをクラウドに移転する場合は、数万円程度で完了できる可能性もあります。一方でフルスクラッチで開発されたシステムの移行費用は数億円に達するかもしれません。早い段階で、システム移行の費用を見積もっておくと安心です。
システム移行には4つのパターンがある
システム移行は、以下に挙げる4つのパターンに分けられます。
| 移行前のシステム環境 | 新しいシステム環境 | システム移行の内容 |
|---|---|---|
| オンプレミス | オンプレミス | 新しいサーバーを用意して、システムを移す方法 サーバーはデータセンターに設置するケースもある |
| クラウド | クラウド | パブリッククラウドなど、IaaSやPaaSを乗り換える際に使われる 新システムはあらかじめクラウド上で構築されている必要がある |
| オンプレミス | クラウド | 物理的なサーバーを用意して運用するシステムを、パブリッククラウドなどに移す方法 物理的なサーバーを用意し管理する手間から解放される |
| クラウド | オンプレミス | 新しいサーバーを用意して、クラウド上のシステムやデータを社内での管理に戻す方法 「オンプレミス回帰」とも呼ばれる |
オンプレミスは社内にサーバーを確保できる一方で、初期費用が高額となりやすいことに注意が必要です。
クラウドは初期費用を下げられる一方で、システムやデータを社外に置くことになるケースが多いです。データを保管するサーバーが海外に設置されているサービスもあります。
費用以外にも新しいシステム環境の特徴やメリット、デメリットを勘案して、自社の業務や運用に適する方法を選びましょう。
IaaSとPaaSについては、オンプレミスからクラウドへ移行する方法と手順、不向きな場合は?で詳しく解説しています。
システム移行に関連する他の用語との相違点
「システムリプレイス」「データ移行」「システム切り替え」などシステム移行と意味が近いと思ってしまう用語があります。システム移行と何が違うのでしょうか。
システムリプレイスとシステム移行の違い
システム移行は新しいサーバーに変わるなど、システム環境が変わっても業務に用いるシステムは変わりません。業務仕様も、現行踏襲が基本となるでしょう。
一方でシステムリプレイスは、業務システムそのものが変わります。システムの変更にあたり、業務フローも含めた刷新が行われることもあります。
新しいシステムに置き換える以外にも、下記のようにSaaSに変更することもシステムリプレイスに該当します。
- オンプレミスからSaaSに変更する
- パッケージやスクラッチ開発のシステムから、SaaSに変更する
- 別のSaaSを使う
データ移行とシステム移行の違い
データ移行は、利用中のシステムに格納されているデータを新しいシステムへ移す作業です。システム移行では、工程の一部にデータ移行が含まれます。
エクスポートとインポートを行えば済むなど、単純にデータを移すだけのデータ移行もありますが、OSやデータベースが変わる場合はデータの構造や形式が変わるので、データの変換も必要になります。
システム切り替えとシステム移行の違い
システム切り替えは、旧システムから新システムへ切り替えを行う作業を指します。システム切り替えは、システム移行を行う工程の一つに含まれます。
システム移行の作業手順
システム移行は、いくつかの作業項目に分けられます。すべての機能を一括して移行する「一括移行方式」を例に、作業手順を確認していきましょう。
- 現状の調査
(新旧のシステム環境や運用方法、データの内容や容量など) - 移行手順や方式の検討、移行作業で起こり得るリスクの把握
- 移行計画書の作成
- 移行に必要なプログラムやツールの作成
- 移行のリハーサルを実施
- 新システムへの移行
- 移行後の動作チェック
システムを移行する方式には、一度に全機能を移さない「段階的移行方式」もあります。移行する単位を「機能」「部門」「拠点」などを基準に分けたうえで、移行作業を繰り返します。
一定期間、新システムと旧システムを併用する「並行運用方式」は、移行後の動作チェックに旧システムも役立ちます。併用する期間が終了し、新システムでの稼働が問題ないことを確認した時点で、旧システムの運用を終了する手順が加わります。
システム移行4つのリスクと注意点
システム移行は運用中のデータに手を加えるため、業務に与えるリスクがあることに注意が必要です。どのようなリスクがあるか、また注意を要するポイントを、4つに分けて解説します。
①移行中、業務が停止する
システム移行は、データの一貫性を保つ必要があります。
システムの移行中にデータが変更・追加・削除されるとデータの不整合が起きうるため、移行時に業務を停止することがあります。業務を停止して行うシステム移行は、以下のようなタイミングに実行されます。
- 多くの企業や官公庁が休みとなる土日、休日
- 多くの人が長期休暇を取る年末年始や大型連休
- 就寝する人が多く、アクセス数が減少する深夜
システムが止まっている時間は、業務にとって機会損失ともなるため、システムが停止する時間を可能な限り短くする工夫も求められます。
②移行に失敗した場合、復旧まで業務が停止する
もしシステムの移行に失敗した場合は、復旧まで業務が止まるリスクがあることにも注意が必要です。
移行の失敗がすぐに検知されて元のシステムの運用を再開できれば、利用者への影響は少ないかもしれません。一方で移行後しばらくしてから失敗に気づいた場合は、いったんシステムを止めたうえで、元のシステムに戻すなどの復旧作業を行います。
状況によってはバックアップからデータを復旧することもあります。
③移行後、業務に支障が生じる
システム移行には、業務に支障を生じるリスクもあります。
「使えるには使えるが、処理速度が下がった」「移行後、利用者から遅いという苦情が来ている」などはよくある例です。サーバーなどのハードウェアや利用者の端末、ネットワークなど多方面にわたる対応が求められます。広範囲な調査となり、解決までに時間を要することも多いでしょう。
④操作性が変わる場合がある
Windows 10からWindows 11へといったOSの変更は、操作性が変わるシステム移行の代表例です。
あらかじめユーザーに変更点や操作の周知、教育を行うことでシステム移行による生産性の低下を防ぐことが可能です。
システム移行に失敗しないための5つのポイント
ここからは上述したリスクを抑え、システム移行をスムーズに完了させるために押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
①システムの仕様、移行する範囲を正確に把握する
システムやデータの移行に漏れや誤りがあると、移行後にシステムが正常に動作しないリスクが高くなります。事前にシステムの仕様を確認し、何をどこまで移行する必要があるのか正確に把握しましょう。
システムは設計書や仕様書が最新の状態に更新されているとは限りません。メンテナンスなど作業や更新の記録を確認して、変更内容をチェックすることも忘れずに。
システムの仕様は実務担当者に確認することもおすすめです。
②リスクを加味した移行期間を設定する
システム移行の期間を、想定している期間やリハーサルで実施した時間どおりに設定することはおすすめできません。
移行作業で想定外のトラブルが発生し、調査や作業のやり直し、手順の修正などに対応する可能性があるためです。トラブルが起きても期間内に作業を終えられるよう、リスクを加味して移行期間を算出することをおすすめします。
③移行作業の工程やタスクを詳しく明記する
システム移行を成功させるためには、以下の項目も重要です。
- どのような順番で何を行うか、必要なタスクをリストアップして順序を決める
- 誰が作業を行っても同じ手順で進められるよう、表現を工夫する
手順書は、作業者によって解釈が異なる書き方をしてはいけません。作業者によって解釈や認識の相違が生じない書き方を心がけましょう。
一例として「4番と5番のスクリプトを実行する」という文章は、以下のように複数の意味にとらえられるおそれがあります。
- 4番のスクリプトが完了したのち、5番のスクリプトを実行する
- 4番のスクリプトを実行したのち、5番のスクリプトを実行する(4番のスクリプト完了を待たなくて良い)
- 4番と5番のスクリプトを実施すればよい(順序は問わない)
作業者によって異なる作業になる事態を避けるためには、「4番のスクリプトの実行完了を確認後、5番のスクリプトを実行する」といった具体的な表現で明記しましょう。
④移行作業を取りやめ、切り戻しのルールを明確にする
システム移行の作業は、時間という制約があります。
ときにはシステムの不具合により、移行作業の続行が不可能となるかもしれません。「頑張ればなんとかなる」と作業を進めてしまうと移行作業のタイムリミットを過ぎてしまい、実務を止めてしまいかねません。
移行作業はどのような状況になったら取りやめるか基準を明文化し、作業に関わる全メンバーに周知徹底します。
時間オーバーで取りやめる場合は、事前に工程ごとのタイムリミットを設定しておき、その時間を過ぎたら作業を取りやめ切り戻し(元のシステム環境、状態に戻す)の判断を行うとよいでしょう。
移行作業を取りやめたら、データやシステムを作業開始前の状態に戻さなければなりません。
バックアップからの復旧や作業の切り戻しを行う手順をドキュメントに明記することで、移行作業を中止することになっても慌てることなく、作業開始前の状態に回復できます。
⑤システム移行後は速やかに動作を確認、トラブルを防ぐ工夫を
システム移行が終わった後、利用者から「いつも使っている機能が動かなくなった」「処理が遅い」などの報告があった場合、システム移行作業によるものか、利用者の誤操作なのか、他の原因によるものか原因を切り分ける必要があります。
システム移行が完了したら、業務で使う機能が問題なく動作しているか、速やかに動作確認を行いましょう。
移行直後の段階で動作確認を済ませることにより、新しい環境でシステムが問題なく使えることを確認できます。顧客からのクレームも軽減できるでしょう。
システム移行後の確認項目の可視化には、チェックリストの活用もおすすめです。
「単に移すだけ」と甘く見ず、万全な準備を行い移行作業を進めよう
システム移行は単にシステムやデータを移すだけのように見えるため、「失敗する可能性は低い」と考える方もいるかもしれません。
しかし実際には「思うように作業が進まない」「データの移行に想定外の時間がかかった」など、システム移行によるトラブルが発生する可能性もあります。
単にシステムやデータを移すだけの作業でも、システムに何らかの手を加えることには変わりありません。システム移行後に業務をスムーズに進められるよう、リスクとその対策をリストアップして万全な準備を行い、移行作業を進めましょう。
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