2024年2月16日より、IT導入補助金2024の交付申請が開始されました。
今年は2023年からの変更点として、新たにインボイス枠が設けられ注目を集めています。
この記事では、インボイス枠の中でも特にインボイス枠(インボイス対応類型)に焦点をあて、
- 前年からの変更点、通常枠との違い
- 対象となるITツール
- 補助率と補助額
- 申請できないケースや減点項目
- インボイス対応類型で申請するメリット
などを解説します。
インボイス枠(インボイス対応類型)はITツール導入費用を最大80%の補助が受けられる制度です。IT化にご興味をお持ちの方は、是非とも利用を検討してみてください。
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INDEX
IT導入補助金2024
IT導入補助金は、主に中小企業や小規模事業者を対象とした、経営上の問題を解決するITツールの導入を支援するための補助金制度です。
経済産業省監督のもと、2017年より継続して実施されており、導入を支援するITツールの種類によっていくつかの補助枠が設けられています。
2024年度は、
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)」
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
の5枠が設けられており、それぞれ補助率や補助金の上限が異なります。
IT導入補助金2024の対象ツール、補助率、補助額などを下記の記事で解説しています。
インボイス枠とは?
IT導入補助金2024では、新たに「インボイス枠」が新設されました。
インボイス枠には「インボイス対応類型」と「電子取引類型」の2つの枠がありますが、この記事では多くの企業が申請対象となる「インボイス対応類型」について解説していきます。
電子取引類型
「電子取引類型」は発注者側(大企業を含む)が発注先の企業のインボイス制度対応を支援するためにクラウド型受発注ソフトなどを購入し、無料でアカウントを配布するという、やや特殊なケースに対応しています。
インボイス対応類型の概要
インボイス枠はIT導入補助金2024より新設されました。
中小企業、小規模事業者のインボイス制度への対応を支援するもので、従来設けられていた「デジタル基盤導入枠」に改変を加えたものです。
2023年「デジタル基盤導入枠」との違い
変更点は主に、
- 小規模事業者向けのソフトウェア導入補助金が最大80%まで引き上げ
- 補助対象ツールからECサイトを削除
の2点が挙げられます。
企業のインボイス制度への対応を強力に推進する目的で、IT導入補助金2024の中で最大の補助率が適用されています。
また、ハードウェアの導入に補助金が交付されるのはインボイス対応類型だけです。
インボイス対応類型の対象となるITツールの条件
インボイス制度に対応したソフトウェア、ハードウェアのうち次の機能のうち1つ以上を有したITツールが補助対象です。
- 会計
- 受発注
- 決済
クラウド(SaaS)のツールの場合、導入より最大2年間分の利用料が対象となります。
導入に伴う各種サポート(導入コンサルティング、初期設定代行、データ移行サポート、保守サポートなど)、追加オプション(機能拡張、データ連携、セキュリティ対策など)も補助の対象です。
ハードウェアはソフトウェアと関連したものに限られる
ハードウェアはPCやタブレットだけでなく、POSレジや券売機も対象になりますが、必ずソフトウェアと一緒に購入する制約があります。また、ソフトウェアと連動した機能である必要があります。
※ITツール・IT導入支援事業者検索で検索できます
インボイス対応類型の補助率、補助額は?
インボイス対応類型は導入するツールの種類(ソフトウェア/ハードウェア、PC・タブレット/券売機・POSレジ)やITツールが有する機能の数、事業者の規模によって補助額が異なります。
※150万円以上の補助金を申請する場合は従業員への賃上げ目標の表明が必須となります。
ソフトウェア
「会計」「受発注」「決済」のうち1機能以上ふくまれる場合
中小企業 | 小規模事業者 | |
---|---|---|
補助率 | 3/4以内 | 4/5以内 |
補助額 | 50万円以下(下限なし) | 50万円以下(下限なし) |
「会計」「受発注」「決済」のうち2機能以上ふくまれる場合
中小企業、小規模事業者 | |
---|---|
補助率 | 2/3以内 |
補助額 | 50万円超~350万円以下 |
2機能以上ふくまれる場合は、補助額のうち50万円以下には「中小企業(3/4以内)小規模事業者(4/5以内)」の補助率が適用され、50万円超には事業規模問わず(2/3以内)が適用されます。
ハードウェア
PC、タブレットなど | POSレジ、券売機など | |
---|---|---|
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
補助額 | 10万円以下 | 20万円以下 |
インボイス対応類型は、IT導入補助金2024の中でもかなり利用しやすい申請枠といえる特徴は主に次の3点にあります。
- 他枠と比べて補助率が高い(最大80%)
- 補助額が最大350万円と高額
- 補助額に下限が設けられていない(安価なITツールの導入にも利用できる)
※中小企業、小規模事業者の区分についてはIT導入補助金2024 インボイス枠(インボイス対応類型)交付規程(PDF)の第9条補助金の交付対象者2-一、2-二を参照ください。
インボイス対応類型が申請できないケース
インボイス対応類型の申請には、いくつか注意しなくてはならない点があります。
IT導入補助金2024の補助対象事業者は中小企業、小規模事業者に限られますが、次のようなケースに該当する場合は中小企業、小規模事業者の基準を満たしていても申請することができません。
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額3分の2以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者
- 大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額を①~③に該当する中小企業・小規模事業者が所有している中小企業・小規模事業者
- ①~③に該当する中小企業・小規模事業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数のすべてを占めている中小企業・小規模事業者
- 確定している(申告済の)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者
このような、いわゆるみなし大企業とされる企業はIT導入補助金2024の補助対象外となりますので、ご注意ください。
減点措置が適用される事業者の条件
インボイス対応類型で申請する場合、事務局が定める加点項目を満たしていれば申請が通りやすくなります。一方で、減点となってしまう条件もいくつか定められている点にはご注意ください。
減点項目として定められているのは次のようなケースです。
- IT導入補助金2021において交付決定を受けた事業者
- IT導入補助金2022及びIT導入補助金2023において通常枠(A・B類型)、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型及び複数社連携IT導入類型)で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含む)
- IT導入補助金2024において、通常枠で申請を行っているもしくは交付決定を受けた事業者
※なお、①~③において選択されたITツールと同一の機能(会計・受発注・決済)を有するITツールを導入する場合はさらなる減点を行う - IT導入補助金2024以降において賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件達成できなかった事業者(やむを得ない理由によるものを除く)
- 中小企業庁が所轄する他補助金において、賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件達成できなかった事業者(やむを得ない理由によるものを除く)
特に注目したいのは1.~3.です。
過去のIT導入補助金の交付や、IT導入補助金2024の通常枠での申請又は交付を受けている場合、減点措置を受けます。
裏を返せば、過去にIT導入補助金の交付を受けている事業者や、通常枠で申請している事業者であってもインボイス枠での申請自体は可能であるということになります。
ただし、過去のIT導入補助金交付決定から12か月以内はIT導入補助金2024に申請できません
詳しい交付規定、公募要領についてはインボイス枠(インボイス対応類型)-関連資料から資料をダウンロードしてご覧ください。
インボイス対応類型と通常枠、どちらで申請すれば良い?
IT導入補助金2024の交付申請は、インボイス枠(インボイス対応類型)か通常枠での申請を検討される事業者が多いと予想されます。
インボイス対応類型の対象ツールは、インボイス制度に対応した「会計」「受発注」「決済」の機能を有するITツールとなりますが、これらの機能を持つツールは通常枠でも対象となっているため、どちらで申請すれば良いのか迷われる方も多いでしょう。
結論からいえば、「会計」「受発注」「決済」の機能を有するITツールを導入するのであれば、諸々の条件が良いインボイス対応類型で申請した方が有利です。
次に、インボイス対応類型で申請するメリットを通常枠と比較しながらお伝えします。
インボイス対応類型で申請する3つのメリット
1.補助率の条件が良い
インボイス枠は中小企業・小規模事業者のインボイス制度への対応を強力に支援するものです。
交付規定には交付の目的の欄に「企業間取引のデジタル化を強力に推進するため、通常枠よりも補助率を引き上げて優先的に支援する」とあります。
通常枠の補助率と補助額
ITツール導入によって改善できる業務プロセス数が「1プロセス以上」「4プロセス以上」の補助率と補助額。
通常枠 | 1プロセス以上 | 4プロセス以上 |
---|---|---|
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
補助額 | 5万円以上150万円未満 | 150万円以上450万円以下 |
補助率を比較すると、通常枠は一律1/2以内に設定されている一方、インボイス対応類型は補助額50万円以内で最大4/5以内、補助額50万円~350万円以下で2/3以内と大幅に引き上げられています。
- ハードウェアも補助対象になる
- 補助額の下限が設けられていない
上記の2点が設けられているのもインボイス対応類型のみです。
インボイス制度に対応したITツールを導入するなら、最も対象範囲が広く補助額が高い枠といえるでしょう。
2.採択率が高い
インボイス枠の前進となる「デジタル化基盤導入類型」は通常枠と比較して採択率がかなり高い傾向にありました。
例えばIT導入補助金2022の採択率は次の通りでした。
2022年度 | 採択率 | 申請件数 | 採択件数 |
---|---|---|---|
通常枠 | 約58% | 24095 | 13959 |
デジタル化基盤導入類型 | 約82% | 45836 | 37639 |
セキュリティ対策推進枠 | 約97% | 297 | 287 |
複数社連携IT導入類型 | 約57% | 7 | 4 |
インボイス枠においても、「インボイス制度への対応を強力に推進する」というIT導入補助金2024の目的に則して採択率が高くなることが予想されます。
また、通常枠より締切が多く設けられる分チャンスが多いです。
IT導入補助金2022だと、通常枠が9次締切まで設けられたのに対し、デジタル化基盤導入類型は19次まで締切が設けられました。
IT導入補助金2024でも4月時点で通常枠は3次締切まで公開されているのに対し、インボイス対応類型の締切は5次まで公開されています。
3.申請が簡易
通常枠に比べて、インボイス対応類型は申請書を作成する際の設問が少なめです。
通常枠だと、交付申請作成時に
- 自社の強み、弱み
- これまで行ってきたIT投資
- 補助金を活用して改善したい業務プロセス、強化したい部署・部門
- 補助金の活用により得られる効果の見通し
- 今後の事業の見通し
- 今後3年分の労働生産性の計画数値
など様々な設問に答えなければなりません。
フリー記載欄も多く、これらすべてが採択の可否につながるため、申請を進める作業は容易ではありません。
一方、インボイス枠はフリー記載欄がほとんどなく、設問自体も少なめです。申請フローが手短かつ、採択率も高い点は、インボイス対応類型で申請する大きなメリットと言えるでしょう。
※申請の詳細なフローに関してIT導入補助金2024の交付申請の手引きでは触れられていないため、IT導入補助金2023の交付申請の手引きを参考としています。
まとめ
2024年より設けられたインボイス枠は、インボイス制度への対応を念頭として補助率の引き上げが行われており、採択率もかなり高めになることが予想されます。IT導入補助金2024の中でも、かなり狙いやすい枠といえるでしょう。
反面、補助金の性質上、通常枠に比べると対象となるITツールの機能はインボイス制度関連に限定されがちです。
導入したいITツールを決める際は「会計」「受発注」「決済」のほかに+αでどのような機能があるのか、どのような魅力があるのかにも目を配りつつ、選定を進めていければ理想的です。
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IT導入支援事業者として申請手続きの代行、サポートも可能です。ぜひご検討ください。
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