2020年からのコロナ渦では、多くの企業が変革を迫られながらもDXの波に乗り、業務が効率化され、多様な働き方が定着しました。
オンラインミーティングやテレワーク、電子契約やSaaS(オンラインで使えるソフト、サービス)の活用など今後も継続していくことでしょう。
中でも製造業や食品、小売・卸業では「オンライン展示会」が注目され、国内だけでなく、海外取引でもオンライン展示会を活用する機会が生まれました。
オンライン展示会のプラットフォームに出展する形態が主流ですが、既存の顧客やバイヤーに向けてはSaaSを使って自社で各国の取引先にオンライン展示会を実施する企業が増えています。
この記事では、国内外でBtoB・卸売業を展開する中小規模のアパレル企業様のビジネスを想定しながら、海外向けオンライン展示会について解説したいと思います。
INDEX
イベント出展型?SaaS型?どちらがいい?
海外のバイヤーに向けてオンライン展示会を開催するには、2種類の方法があります。
イベントに出展するタイプと、SaaSを使って自社で開催するタイプがあり、どちらもオンラインで訪問者やバイヤーに向けて商品やコレクションを紹介し、問い合わせや商談、受注など双方向でコミュニケーションができます。
イベント出展型と、SaaS型。
海外のバイヤーと取引のある中小規模のアパレル企業はどちらを選ぶと良いでしょうか。
まずは共通したメリット・デメリット、そして、それぞれの一般的な特徴を比較して整理してみましょう。
共通するメリット、デメリット
どちらもオンラインで開催されるため、場所の制限がなく世界中からアクセスでき、天候に集客を左右されることもありません。開催期間中は、バイヤーが24時間いつでも商品をチェックでき、じっくり検討できる自由度の高さも魅力です。
何よりコスト面のメリットが大きく、現地への移動時間をカットでき、渡航費、滞在費も必要ありません。ただ、時差があるので、アメリカやヨーロッパが主な取引先となる展示会では、深夜や早朝に対応することが多く、スタッフの負担やリソースの分担が課題となります。
共通したデメリットとしては、やはりリアルでの臨場感、偶然の出会いやマッチングの体験、商品を手に取って目で見た実感、声かけの営業などを再現するにはまだまだ難しいのが現実です。
しかし、コミュニケーション、ビジュアル、効果測定においてもオンラインの利点を活かした機能があります。
高精細画質でズーム機能のついた商品画像でディティールを表現できたり、動画コンテンツやライブ配信で商品やブランドのイメージを伝えることもできます。
訪問者とのやり取りは、チャットやビデオ通話、メッセージなど普段慣れ親しんでいる機能でリアルタイムにコミュニケーションが可能で、関心を持った訪問者はカタログや発注書をダウンロードできるなど、展示会が終わった後の関係作りにも役立てられます。
データ分析もオンライン展示会ならではのメリットです。
いつ、何人が、どの商品をどれくらい閲覧したかなど行動情報の履歴を分析できれば、訪問者のニーズや課題、商品開発のアイデアにつながる知見の獲得が期待できます。
イベント出展型の特徴
複数の企業が参加して、バーチャル空間のブースで3DCDや2Dで表現された商品を展示します。
リッチなグラフィックの中を来場者のアバターが歩いて会場を回ったり、VRで臨場感のあるPRができるプラットフォームもあります。
イベント主催者の広告やPRなどで見込まれる集客力が合同オンライン展示会に出展する第一のメリットになります。
これまで接点のなかった顧客層から引き合いがあったり、未知のニーズを発見できたりと、新規開拓に向いています。
反面、イベント出展型のオンライン展示会は出展費用がネックになります。
大規模な合同オンライン展示会では、数十万〜数百万円の費用がかかる場合もあり、比較的小規模のイベントでは数万円から出展できますが、機能や集客で自社の要望と合った内容で出展できるか検討が必要でしょう。
機能面では、商談やセミナーなどがメインで、受注やオーダーの集計など取引の管理はできないプラットフォームが多く、アパレル企業が出展する際には確認が必要です。
また、システムの操作に慣れるのに時間かかってしまい、覚えている間にイベントが終わってしまったということもあるので、ビジュアルや説明文の入力以外に、操作方法の事前準備も念頭に入れてスケジュールを調整すると良いでしょう。
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SaaS型の特徴
受注管理が一体となったバックオフィスSaaSの展示会機能を使って、自社で開催するオンライン展示会です。
カタログ作成から商談、受注や集計など一連の展示会業務を一つのシステムで完結できます。
展示会のためにサイトを制作したり、運営会社への手続きなどもなく、コレクションを発表するタイミングで、あるいはバイヤーのニーズに合ったタイミングなど、オンライン展示会を柔軟に開催できる点が好まれています。
バイヤーはデジタルカタログで商品やコレクションを閲覧して、ECサイトと同じ操作感でオーダーができます。
特定のバイヤーだけのカタログを作ったり、コレクションの中から限定商品やコラボ企画、先行商品のカタログをアレンジして、シーズン以外の企画にも利用できます。
SaaS型の最大のメリットはコストの安さです。
総合型のバックオフィスSaaSは月々数万円で利用でき、追加料金なしでオンライン展示会機能が使えます。
オンライン展示会のための予算を立てずに、SaaS利用料のみで開催できるコストパフォーマンスはイベント出展型との大きな違いです。
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また、言語や通貨、貿易条件の設定など海外取引に適した機能が充実しているSaaSもあり、アパレルのみならず、幅広い小売、卸売業の海外向けオンライン展示会に活用できます。
集客については、SaaS型のオンライン展示会は既存の顧客向けとなります。
すでに取引のあるバイヤーからのオーダー受注が主な役割で、新規開拓への活用には設計されていません。
(新規獲得と組み合わせた使い方について後述します)
オンライン展示会の種類 | ||
イベント出展型 | SaaS型 | |
費用 | 数十万円~/回 | 数万円~/月 |
集客 | 運営会社 新規獲得向き | 自社 既存顧客向き |
海外対応 | △ | 〇 |
受注管理 | ✕ | 〇 |
開催期間 | 固定(数日~通年) | 自由 |
中小規模のBtoBアパレルの海外向けオンライン展示会は「SaaS型」がおすすめ
複数の海外バイヤーと取引がある中小規模のアパレル企業には、SaaS型でのオンライン展示会が最適です。
- 開催コストが安価
- 海外取引に充実した機能
この2点において、海外向けオンライン展示会はSaaS型に優位性があるといえます。
特に既存の顧客、バイヤーに向けた海外向けオンライン展示会なら、低コストで効率良く、自社に合わせた条件で手軽にカスタムが可能で、いつでも実施できる総合バックオフィスSaaSを活用することをおすすめします。
加えて、イベント出展型のオンライン展示会は、アパレル・ファッション分野で海外に向けた開催が少なく、海外のバイヤーとのコミュニケーションを想定した言語や通貨、翻訳のサポート、機能がないところが多く、現状では国内向けのツールといえます。
リアルの展示会と同時開催、使い分けを考える
世界がコロナ渦から平常化へと進む中、海外渡航に規制が無くなり、以前のような規模でさまざまなイベントが催されています。アパレル・ファッション分野でもオンライン展示会のみではなく、リアルとの同時開催も増えつつあります。
オンラインとオフラインそれぞれの長所を活かした展示会、コミュニケーションでバイヤーと自社商品の接点を多様化できる、双方にとってメリットのある営業活動ができる機会と捉え、施策を講じてみるのも面白いかもしれません。
- リアルの展示会への出展は内容や見込まれる成果からイベントを選別して渡航滞在費を最適化して、オンライン展示会は積極的に参加、開催する
- リアルの展示会では新規開拓、オンライン展示会では詳細の確認や受注へのフォロー、既存顧客との関係強化
など、特徴を活かして使い分け、自社のオンライン展示会の役割、位置付けをグローバルな視点で見直してみてはいかがでしょうか。
海外向けオンライン展示会の選び方
では、どのようなSaaSを選ぶと良いでしょうか。
BtoB、卸売業のアパレル企業にとって、海外のバイヤーとの商談、取引がスムーズに行える機能が、わかりやすい操作で使えるオンライン展示会かどうかが重要になります。
海外向けにオンライン展示会を開催できるSaaSの条件は次の3点です。
1.多言語・多通貨
海外取引のオーダー、受注管理の基本的な機能。
- バイヤーごと、カタログごとに言語と通貨を設定できる
- 指定した言語で請求書やオーダーコンファメーションを作成できる
- バイヤーの操作画面も多言語対応
2.貿易条件を設定できる
複雑な貿易の手続きや関税の対応をかんたんな操作で設定できるかどうか。
- FOBやDDPなどインコタームズに対応した価格に設定できる
- 商品データからコマーシャルインボイス、パッキングリストを発行できる
- デポジット、バランス、NETなど請求書発行から入金管理までできる
- バイヤーごとに貿易条件、支払条件を設定できる
3.展示会業務がシームレスに完結する
オーダーから集計、請求書発行、入金管理まで1つのツールで一元管理できるかどうか。
- バイヤーごとにデジタルカタログが作成できる
- 個人(プレス関係者、個人輸入など)、法人どちらでもオーダーできる
- 国別、通貨別、貿易条件別に集計できる
- オーダー変更は1か所の修正で関連データが更新される
海外取引は国によって、バイヤーによって取引形態や条件、輸出手続きが異なり、複雑な業務の連続です。
上記のような機能を備えた、総合的にBtoBの販売管理ができるバックオフィスSaaSを選び、バイヤーとの商談、取引に集中できるオンライン展示会を運用しましょう。
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SaaS型オンライン展示会の種類
SaaSを使った、海外のバイヤーに向けたオンライン展示会は、言語や通貨、貿易条件などは異なりますが、国内向けと同じように、ECサイトと同じような操作感でバイヤーからのオーダーを受け付けます。
デジタルカタログからのオーダーが一般的ですが、最近は「インスタントオーダーリンク」というメーカーやブランドから送られてきたURLにバイヤーがアクセスしてオーダーする方法もあります。
デジタルカタログ
新しいコレクションやシーズンのラインシートを、バイヤーごとに合わせた商品構成、ビジュアル表現でレイアウトできます。
バイヤーは時差を気にせずにオーダーでき、現地の言語と通貨での取引や操作は1つのシステムの中で完結します。
アクセサリーや帽子、靴を360°にぐるぐる回転させて表示できたり、繊維のすき間まで見える高精細ズームなど、リアリティのあるビジュアル表現は、バイヤーが商品をじっくり時間をかけて納得できるまでチェックできる重要な機能です。
他にも「受注生産用」「在庫販売用」のカタログを作ったり、取引条件や支払条件を個別に設定したカタログをいくつも作ることができます。
インスタントオーダーリンク
カタログを1つ指定し、取引条件や掛け率などを設定した誰でもアクセス可能なページを作ることのできる仕組みです。(パスコードを設定する事も可)
メールやSNS、自社サイトなどにリンクを貼ることで、簡単に新規訴求ができる仕組みです。
バイヤーに自社サイトのオンライン展示会へアクセスしてもらい、コレクションや商品ページを見てもらうデジタルカタログではなく、コレクションや商品ページのURLをバイヤーに送って、ダイレクトに商品情報へアクセスしてもらえる方法が「インスタントオーダーリンク」です。
次のような流れで、バイヤーはURLを受け取り、オーダーすることができます。
- 言語や通貨、価格や取引条件を設定したアイテムのページ、見せたいアイテムをまとめたカタログを作成する
- そのページやカタログのURL = https://maker.dextre.app/xxxxxx(例) をメールやLINE、Zoomのチャットでバイヤーに伝える
- バイヤーはURLをクリック、タップするだけでコレクションや商品ページにアクセス、オーダーできる
(URLにパスワードを付けて、限定したメンバーにだけ公開もできます)
オンライン展示会を案内するメール配信でURLを知らせたり、初めて取引するバイヤーにURLを送ってカタログを見てもらったりなど、オンライン展示会以外の取引チャネルに、バイヤーとブランドのコミュニケーションに「インスタントオーダーリンク」を活用できます。
利用事例と効果、バイヤーの反応
国内受注と海外受注の両立、オンライン展示会やインスタントオーダーリンクでの受注など海外バイヤー様との取引にDEXTREをご利用いただいております。
まとめ
コロナ渦がようやく収束に向かいつつある現在、多くの企業がビジネスを活発化させています。
海外渡航への規制も緩和され、以前のように現地で開催される展示会が増えていくと思われますが、同時にオンライン展示会での新作紹介、説明や商談といったコミュニケーション、オーダーから受注管理まで、バイヤーにとっても便利で検討しやすいクラウドツール、SaaSでの営業活動は、アパレルを始め、海外と取引のあるメーカー、ブランドにとってグローバルな成長に欠かせない取り組みとなることでしょう。
大規模なシステム開発が必要であった以前とは違い、さまざまなSaaSがリリースされ、中小規模のBtoB企業も、低コストでオンライン展示会を始められるようになりました。
顧客やバイヤーに向けてクオリティの高いオンライン展示会を実施できるよう、ビジュアル面だけでなく、自社の業務、取引形態に合ったサービスを選びましょう。