中小規模のBtoBアパレルメーカーが取り組みやすく、自社、バイヤーの双方にメリットのあるオンライン展示会のシステムはどれか、準備から開催までの具体的な方法、そして注目のオンライン販促ツール「インスタントオーダーリンク」についてお伝えします。
INDEX
急速に広まるアパレルメーカーのオンライン展示会への取り組み
- 「バイヤーとの商談数が減った」
- 「新規開拓のリード数が伸び悩んでいる」
この2、3年の間、展示会の中止や延期、規模の縮小、来場者の減少など新型コロナウイルスの感染対策の影響を受けたBtoBアパレルメーカーは少なくありません。
これまでの実際に商品を見て、手に取ってから商談や交渉が始まる営業活動から、非対面で顧客とコミュニケーションを取りながら契約、取引へと進めるにはどうすればいいのか、新たな営業活動に関心が高まり、規模の大小を問わずアパレルメーカーが展示会以外の販路を見出そうとしています。
中でも、今まで本格的な活用に至っていなかったWEB領域の営業活動、マーケティングが見直され、「オンライン展示会」を開催する、または出展するアパレルメーカーが急増しました。
アパレル以外にもオンライン展示会と相性の良い自動車をはじめとした製造業、食品や家具など小売業が展示会、見本市をオンラインに移行して開催、出展する取り組みが本格化しています。
リアルの展示会のように商品に触れたり、対面のコミュニケーションはできないながらも、場所、時間、移動の制約や天候の影響を受けない、デジタル技術でカバーできる体験価値といった利点を活かしたオンライン展示会の運用が注目されています。
- 「オンラインでの営業活動を模索している」
- 「低コストでプロモーションを拡大できないだろうか」
顧客との接点を増やしたい、既存のバイヤーからの受注率アップと受注回復を図りたいといった課題をお持ちのBtoBアパレルメーカーの営業担当者様、とりわけ大胆に予算や社内リソースを投下しづらい中小規模の企業様に向けて「最適なオンライン展示会ツールは何か」を説明していきます。
オンライン展示会の種類
オンライン展示会は「WEB展示会」「バーチャル展示会」ともいいます。
顧客やバイヤー、訪問ユーザーがオンラインで商品やサービスを画像や動画で見たり、担当者とチャットでコミュニケーションしたり、リアルタイムで商談をするバーチャル空間です。
オンライン展示会を提供している企業は、リアルの合同展示会を主催しているイベント会社の他にも、プラットフォームを運営するIT企業、SaaSや基幹システムを開発するシステム会社など様々です。
オンライン展示会のプラットフォームは大きく3つに分けられます。
- プラットフォームを利用した「配信・SNSタイプ」
- 「3D/2Dタイプ」
- オンライン展示会の開催から受注管理まで取引業務を1つのツールで完結できる「受注システム一体型」
です。
それぞれ特徴や費用感、受注までの流れを解説します。
配信・SNSタイプ
YouTube、Instagram、Twitterで開設したアカウントを運用してプロモーションを展開する「配信・SNSタイプ」のオンライン展示会です。
このタイプの展示会の主なコンテンツ、役割は次の通りとなります。
- ファッションショー動画の公開
- 新作紹介のライブ配信
- 投稿する画像や動画のデジタルカタログ
- ライブ配信でコメントを通したコミュニケーション
- コレクションのアーカイブ
- ブランドの認知拡大
展示会のライブ配信は臨場感があり、視聴者の熱量も高く、フレッシュな状態での商談が期待できます。投稿でのコンテンツ公開も、視聴者が楽しめる内容、品質であれば拡散してもらいやすくなるでしょう。
また、普段からアカウントを積極的に運用して認知と影響力を高め、新作発表や展示会のタイミングで集客できるよう、フォロワーを獲得・維持しておく必要があります。
ブランドの公式アカウントとは別に、展示会専用アカウントを開設してバイヤーや顧客に限定公開するのも良いでしょう。
運用コスト
YouTube、Instagram、Twitterなどアカウントの開設、利用は無料です。
プラットフォームの利用自体は手軽に始められ、個人で使っているスタッフがいたり、解説ブログや動画で解決できることも多いので、操作に困ることもないでしょう。
ただ、投稿する動画の企画、素材撮影、編集などクリエイティブの制作にコストがかかります。
社内にSNSの運用が得意なスタッフをアサインできれば、UGCのようなユーザー目線のコンテンツを投稿することで比較的コストを抑えて良質なコンテンツを制作できますが、本格的なクオリティで作りこむなら、制作チームの人件費や外部委託費用が必要になります。
受注までの流れ
YouTubeやInstagram、TwitterにBtoBアパレルの取引に合った注文方法、決済の機能はないため、SNS上でバイヤーから受注することは難しいでしょう。(Instagramにはショッピング機能があり、通常のEC(商品ページからの販売)が可能です。)
配信・SNSタイプのオンライン展示会はあくまでブランドの認知、PRのツールとしての位置付けで、投稿したコンテンツやDMからZoomなどビデオチャットツールへの動線を設計して、商談につなげる方法が考えられます。
【配信・SNSタイプ】アパレルメーカーのオンライン展示会ツールに使える?使えない?
YouTubeやInstagram、Twitterはファンの獲得をメインとしたマーケティング、プロモーションの一環として運用する、どちらかというとBtoC向けのプラットフォームといえます。
受注機能の他、オーダー情報や顧客情報を管理する機能はなく、請求と入金管理もふくめたバックオフィス業務は外部のソフトやシステムを使って行うため、オペレーションが煩雑になります。配信・SNSタイプだけをオンライン展示会ツールにするのでなく、リアル展示会、または3D/2Dタイプ、受注システム一体タイプと組み合わせた施策が有効でしょう。
3D/2Dタイプ
バーチャル空間に実店舗や展示会ブースを3DCG、2Dで再現するオンライン展示会です。
自社ブランドの単独開催、または複数のメーカー、ブランドが出展して開催される合同オンライン展示会があります。
このタイプでオンライン展示会を実施するメリットは次の5点です。
バーチャルブースでリアルに表現された商品を確認できる
- 3DCG、VRを使った高い臨場感、没入感
- 人数の制限なく、国内外からの来場が期待できる
- 参加者が移動したルート、滞在時間、アンケートなどデータ活用ができる
- 開催企業が集客、運営を担ってくれる(合同オンライン展示会)
対して、デメリットは2点ほど考えられます。
- リアルの展示会に近い疑似体験ができる3D/2Dタイプですが、CGや動的なコンテンツが通信環境に負荷がかかるため、動作が重くなったり、視聴が途切れてしまう可能性があります。
- 集客についても開催企業の認知度、PRの度合いによって参加者の数が左右される、声がけでブースに呼び込むことはできない点にも注意しておきましょう。
運用コスト
3D/2Dタイプは運用コストが最大のデメリットといえます。
自社の特設サイトで開催するならフルCGの制作費、ブースや商品を360度パノラマカメラで撮影する費用、システムの開発費、開催期間中のシステム維持費などかなり大規模なプロジェクトになります。
プラットフォームへの出展も、イベントの規模や提供されるサービスや機能によっては数百万、一千万円を超える出展費用のオンライン展示会もあります。
シンプルなバーチャルブースなら同じイベントでも数十万円から出展できますが、自社のイメージや商品に合った形になるか、じゅうぶん検討する必要があるでしょう。
受注までの流れ
プラットフォームによっては受注やオーダー情報の管理、決済への動線がない場合があります。
出展するプラットフォームがどのような機能、サービスを提供しているのか、参加者とどのようなコミュニケーションがとれるのか、準備から当日、イベント終了後のフォローまで一連の流れや使いやすさなど、出展を検討する段階でしっかり確認しましょう。
【3D/2Dタイプ】アパレルメーカーのオンライン展示会ツールに使える?使えない?
やはり、中小規模のアパレルメーカーにとって3D/2Dタイプのオンライン展示会はコスト面で厳しいと言わざるを得ません。
出展費用が数十万から数百万と高額になるため、出展するアパレルメーカーは予算の余裕のある企業に限られており、中小規模のブランド出展は少ないのが実情です。
また、3D/2Dタイプの合同オンライン展示会は様々な業種で開催されていますが、BtoBアパレルの合同オンライン展示会はまだまだイベント数が少なく、これからの取り組みが期待されます。
自社開催の3Dオンライン展示会
合同3Dオンライン展示会
合同2Dオンライン展示会
受注システム一体型
ECサイトのようなUI/UXで、リッチなデジタルカタログからバイヤーが発注する、オンライン展示会と受注システムが一体となったプラットフォームです。
オンライン展示会の機能がついているバックオフィスSaaS(※)、販売管理システムが選択肢になります。
※SaaS(Software as a Service)=インターネットを通してWEBブラウザで利用するアプリケーションやサービス。
- オンライン展示会開催から受注集計、伝票作成、納品までワンストップ
- 通信負荷が小さく、スマートフォン、PC、タブレットのブラウザで完結
- 展示会のためにWEBサイトを開設しなくてもいい
- 受注から納品までのリードタイムが短縮できる
- バイヤーに合わせた時期、ニーズでコレクションをアレンジできる
リアル展示会のような商品を手に取りながらの商談はできませんが、デザインの背景や素材、技術へのこだわりを伝える動画、再現度の高い360度画像や高精細画像でブランドの魅力を表現することができます。
運用コスト
パッケージ型のシステムは初期投資の開発費が数百万、維持費に毎月数万〜数十万と高額になりますが、SaaSなら開発費は必要なく、月額料金のみでオンライン展示会、受注管理から商品管理といったすべての機能が利用できます。※
SaaSの利用料金は、対応業種や機能によって数千円から数万円と差がありますが、BtoBアパレルに特化したバックオフィスSaaS DEXTREの場合、月額料金は20,000円です。
※機能拡張に追加料金が必要になるSaaSもあります
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受注までの流れ
配信・SNSタイプ、3D/2Dタイプと受注システム一体型が大きく違う点が、バイヤーからの受注以降のオペレーションのスマートさです。
BtoBアパレルに特化したSaaS・システムなら、煩雑な展示会業務、独特で複雑な取引に合った機能で、使い勝手の良い操作性になっています。例えば、展示会の準備から納品まで、次のような作業とプロセスを一つのツールで完結できます。
- カタログ作成(撮影は別途作成、または依頼)
- ラインシート作成
- 商談(チャット)
- バイヤーの発注
- 受注状況の確認
- オーダー情報の集計
- 商品管理で在庫状況と照会
- 生産管理
- ピッキングリスト作成
- 伝票発行、送信
- 入金管理
- Excelなど外部ソフトへのデータ出力
オンライン展示会とバックオフィスが連携している受注システム一体型だからこそ実現できる、受注から納品まで効率よく、コストをおさえた業務フローが特徴です。
取引の途中で生じた受注内容の変更もかんたん。一か所の修正で、関連するデータと伝票が自動で修正され、転記や聞き間違いの入力ミスを大幅に減らせます。
【受注システム一体型】アパレルメーカーのオンライン展示会に使える?使えない?
中小規模のBtoBアパレルメーカーのニーズや業務体系に合うオンライン展示会ツールが「受注システム一体型」でしょう。
その理由は次の2点です。
- BtoB取引に最適化されている
- 導入コスト、維持コストが安価
今後、配信・SNSタイプ、3D/2Dタイプもプラットフォームの進化によって、より良い展示会体験をバイヤー、ブランドの双方に提供できるようになることも考えられますが、現時点では受注システム一体型、特にアパレル業務に対応しているバックオフィスSaaSのオンライン展示会機能が、中小規模のBtoBアパレルメーカーにとって使いやすく、コストをおさえて始められるツールといえます。
中小規模のBtoBアパレルメーカーが選ぶべきオンライン展示会ツール 3つの条件
では、数ある受注システム一体型のオンライン展示会ツールからどれを選べばいいのか「ここだけはおさえておきたい」ポイントを3つお伝えします。
1.ビジュアルを高品質に、多様に表現できる
手にとって商品を確認できないオンライン展示会は画像や動画の品質がとても重要です。
商品のビジュアル表現に手を抜いてしまうと、ブランドのイメージも信頼も台無しです。
構成や画質、ストーリーにこだわった動画や画像を大きく、美しく、たくさん(できれば無制限に)掲載できるツールを選びましょう。
2.条件の違うオンライン展示会を複数開催できる
シーズンごと、コレクションごとに展示会を作ることができるのは基本ですが、バイヤーごとに内容を変えられるツールを選択しておくと良いでしょう。
取引実績のあるバイヤー、招待客として初めて取引するバイヤー、商品のラインナップに条件や好みがあるバイヤーなど、バイヤーによって提案したい商品が異なっている場合、バイヤーごとに作成したデジタルカタログ、コレクションで展示会を案内できると便利です。
他に、バイヤーごとに掛け率や取引条件、支払い条件を設定できる機能も取引先の多いアパレルメーカーには必要な機能です。
3.海外取引に対応している
場所を選ばずに開催できるオンライン展示会は、遠方のバイヤーだけでなく、海外のバイヤーにも対応したツールが必要です。
特に、取引するバイヤーの拠点が世界各国にある場合、多言語・多通貨の同時取引ができることが必須条件になります。
海外のバイヤーに合わせた言語、通貨、商品情報、価格、取引条件を設定できるなど、細やかな対応ができるツールは重宝します。
BtoBアパレルの新しい取引、受注のかたち「インスタントオーダーリンク」
「インスタントオーダーリンク」はURLを作るだけで完成する販売ツールです。
- 受注システム一体型のオンライン展示会ツールにある機能の一つで、商品一覧からカタログにまとめたい商品を選んでボタンをクリックするだけでURLが作られ、リンク先にWEBカタログが自動で作成されます。
- ECサイトがなくても、メールやLINE、ZoomのチャットにURLを送れば、先方が商品ページにリンク、受注が完了して取引がスタートします。インスタントオーダーリンクから発注したバイヤーは自動でバイヤーリストに追加されます。
- URLにはパスワードが付いているので、パスワードを伝えた人しか見ることができなくすることも可能です。
- 海外のバイヤーには言語、通貨を変えてURLを作ることも可能です。
アパレルメーカーがデジタルマーケティングを展開する中で、例えば次のような販路拡大のアイデアを試せるのではないでしょうか。
- 先行商品や特注商品をダイレクトに案内
- 既存顧客への柔軟な取引対応
- WEBサイトやオンライン展示会以外の取引チャネル
- 顧客限定キャンペーンへの活用
BtoCの商品展開があるブランドなら、SNSのタイムラインに投稿したり、インフルエンサーマーケティングに活用する方法もあります。他にも、LINEの公式アカウントの自動応答機能を使って、インスタントオーダーリンクを送る流れを組むと、スマートフォンから手軽に発注できるチャネルができあがります。
コロナ渦が終わっても「必要なツール」の声
2020年に始まったコロナ渦の影響で、世界的にモノや人の移動、取引方法や働き方に変化が生まれました。事態の収束にともなって、元に戻っていくこともあれば、新しいかたちを継続していくこともあるでしょう。
中でもDXによって効率化が進み、生産性を上げて付加価値を生み出せた業種、業務は元に戻す選択肢はなく、さらなる進化が求められます。
中小のBtoBアパレルメーカーにおいても例外ではないでしょう。
実際に、アパレル業務に特化した総合バックオフィスツールDEXTREで受注管理、オンライン展示会を利用しているメーカー様から、「インスタントオーダーリンク」をバイヤー様へメールで送ったり、イベント時に関係者様へお配りすることで、リアルと変わらない受注や売上につながっているとのお声をいただいております。
展示会のコストを削減できるだけでなく、バイヤー様にとってもアクセスが簡単で、1つ1つの商品について情報が豊富で見やすいオンライン展示会は、リアルでの来場よりも商品をじっくり検討する時間が増えたとのことでした。
メーカー様、バイヤー様双方にとって、業務が効率化され、より価値のある接点となったオンライン展示会は、コロナ渦が過ぎても「必要なツール」とお話いただいたメーカー様の事例紹介は、下記の記事にてご覧いただけます。
まとめ
この2、3年でアパレルメーカーを取り巻く状況は大きく変化しました。
リアルの展示会を以前の規模で開催できるようになるには、もうしばらく時間がかかりそうです。
そんな中で早々にオンラインでの営業活動、販路拡大にチャレンジを始めたアパレルメーカーは少なくありません。急速なニーズの高まりを受けて、オンライン展示会はどんどん進化しています。プラットフォームもSNSやSaaSだけでなく、シンプルなURL販売、VRやARを駆使したコレクションのプレゼンテーションも生まれています。
コロナ渦はアパレル業界だけでなく、影響を受けた様々な企業、そして消費者の多くがオンラインを利活用する機会、時間を増加させました。ビジネスを成長させる可能性がオンラインにあるのか、チャンスをつかめるのか、アパレルメーカーには大胆な舵取りが求められている時なのかもしれません。
DEXTREはBtoBアパレルメーカーに向けて、オンライン展示会と受注管理などバックオフィス業務をパッケージにしたSaaSを提供しています。リアルとオンラインを横断した営業活動、業務改善を目指すBtoBアパレルメーカー様をシステム構築と実務の両面から支援しております。
自社に合ったオンライン展示会の始め方、業務システムの導入や運用についてなど、どうぞお気軽にご相談ください。