アパレル業界には取引先ごとに違う取引や支払いの条件、何種類もの帳票や書類を作らなければならないなど、複雑な商習慣があります。
加えて、海外と取引するアパレルメーカーは、輸出や輸入の手続きに関する書類が必要となります。正確さとスピードが求められ、変更があれば作り直しとなり、貿易事務に多くの時間、コストがかかっています。また、海外と日本国内の両方で取引のあるメーカーは、国内外で商慣習や価格領域が異なり、受注管理や手続きが特に煩雑になります。
業務改善、効率化が望まれながらも、長らくデジタル化、オンライン化が広がらず、手作業、手入力での業務が中心だったアパレルメーカーですが、DXの推進やリモートワークの普及に伴って、少しずつですが、ITやWEBを取り入れた変化が起こり始めています。
特にここ数年は、アパレル系クラウドサービスがいくつかリリースされたのも追い風となって、受注や生産の管理をデジタル化、オンライン化するアパレルメーカーが増えています。
とはいっても、アパレル系のシステム、サービスなら何でもいいかというと、そうではありません。
海外と取引するアパレルメーカーは、貿易業務の書類作成、取引はかんたんにできるのか、わかりやすい使い方で実務がデジタル化できるのかが重要です。
今の業務をスムーズに置き換えられるシステム、サービスを選んでおかないと、導入に時間がかかったり、デジタルと手作業が混ざってしまうなど、改善の効果が思うように得られません。
そこで、今回は海外と取引するBtoBアパレルメーカーの受注管理システムを選ぶ大切な10のポイントを紹介します。
INDEX
アパレルの貿易事務について
まず、アパレルの貿易業務がクラウドサービスでも同様にできるのか、どのような内容、手続きをデジタル化、オンライン化できるのか整理してみたいと思います。
主に「貿易事務」といわれる仕事の中で、商品の輸出・輸入の手続きに必要な書類の作成、海外の取引先との受発注の管理、商品管理などがクラウドサービスでカバーできます。
輸出事務
- 輸出通関の手配
- 貿易書類の作成
- 各種帳票の作成
- 在庫の確認
- 納品の管理(納期、仕入れ、出荷依頼など)
- 保険の手配
- 運送手段の手配
etc…
輸入事務
- 輸入通関手配
- 貿易書類の作成
- 関税や消費税納付
- 入荷商品の管理
- 倉庫の調整、管理
etc…
貿易書類
- 船積依頼書
- 輸出許可書
- インボイス(仕入れ書、商業送り状)
- パッキングリスト(梱包明細書)
- 船荷証券(B/L/海上輸送の場合)
- 貨物到着案内(海上輸送の場合)
- 航空貨物運送状(エアウェイビル/航空輸送の場合)
- 信用状(L/C)
- 為替手形(B/E)
- 商材の原産国証明書
- 検査証明書
- 重量容積証明書
- 付属書
etc…
※クラウドサービスによって作成、管理できる書類や機能は異なります。
他にも様々な申請書があり、契約によっては取引先に提出を求められた書類を作成します。
アパレルメーカーでは、貿易事務の担当者が揃えたこれらの貿易書類をもとに輸出入の手続きが進んでいきます。書類に不備があれば、手続きが止まり、納期や支払が遅れることもあります。ミスや漏れがないように、正確でスピーディーな書類作成と、確認、処理が貿易事務に求められています。
とはいっても、手入力や転記ではどうしてもミスや漏れはあります。注文内容や取引条件の変更があれば、都度作成する作業も、慌ただしさの中だと注意がそがれてしまいます。
複数の取引に複数の書類を用意して、変更にも対応しながら、商品と倉庫の管理も行う貿易事務は担当者の負荷が高く、ちょっとした不備が納品に影響するため、取引先との信頼回復のコストも考えると、もっとわかりやすく、早くて確実な貿易事務を実現したいものです。
こういった課題の解決が、アパレルのバックオフィスに特化したクラウドサービスの得意とするところです。
では、アパレルの貿易事務をもっと楽に、ストレスなく短時間で行えるクラウドサービスはどのように選べばいいのか、比較、検討するときに大切なチェックポイントを見ていきましょう。
貿易事務ができるアパレル系クラウドサービスの選び方
10のチェックポイント
アパレル系の貿易事務、受注管理や商品管理、請求から入金までまとめてできるクラウドサービスは、これから海外取引を始める企業、現在海外と取引中の企業にも導入しやすく、柔軟に使えるサービスになっていなければなりません。
また、アパレルメーカーだけでなく、取引先、バイヤーにとってもわかりやすい、スムーズな取引環境とコミュニケーションを提供できる、グローバル対応のクラウドサービスを選ぶための、10のチェックポイントを紹介します。
1.貿易書類がかんたんに作成できる
まずは何といってもコレです。
コマーシャルインボイス、プロフォーマインボイス、パッキングリストなどの貿易書類はもちろん、デポジット、バランス、NETの請求書や納品書、オーダーコンファメーションといった各種帳票を商品情報、受注情報から自動で作成できるクラウドサービスが基本です。
内容の変更や再発行もかんたんで、紙で作成しているような操作性なら、煩雑な書類作成をストレスなく、短時間で終えることができます。
また、クーリエやフォワーダー情報の管理ができるかどうか、取引先ごとに違う掛け率や卸値取引の特別割引率、支払条件を決められて、貿易条件(FOB、EXW、DDPなど)、通貨を組み合わせた価格が自動で計算できる機能もあるかもチェックしましょう。
2.多通貨、多言語に対応している
多通貨、多言語はグローバルに取引を行うアパレルメーカーに必須の機能です。
英語圏、中国、韓国などメジャーな言語や通貨だけでなく、ヨーロッパ、アジア各国の主要通貨、言語をカバーしているサービスを選びましょう。
メーカーが使う管理画面は日本語、海外のバイヤーや取引先が見る商品情報はイタリア語、貿易書類や帳票は英語と言語を分けられると便利です。
また、取引先の通貨に合わせた商品情報での受注、請求書に基づいた多通貨対応の入金管理が可能かも確認しましょう。
3.取引先ごとに違う貿易条件で受注できる
先述した通り、貿易事務には書類作成を始め、FOB、EXW、DDPといった複雑な貿易条件の取り決め、関税対応があります。
クラウドサービスでは、あらかじめ取引先ごとに貿易条件を設定できる機能があれば、個別に海外の取引先から貿易条件に合った価格で受注できます。あとは、1.で紹介したように受注情報から貿易書類が自動で作成されて、請求書、納品書から入金まで、一連の受注管理が完結します。
4.国内取引と両立できる
多くのアパレルメーカーは海外と国内の両方に取引先を持っています。
国内外で取引先が分かれていても、取扱う商品やブランドが共通しているケースが大半です。
当然、海外取引と国内取引を一つのサービスで管理できるクラウドサービスを使った方が使い勝手がいいです。
貿易事務など海外取引にはフィットしているけれど、国内取引は日本の商習慣に対応していないからといった理由で、海外用と国内用でシステムを分けて使うのは、維持費もかさみ、切り替えながら仕事をするのもストレスです。
- 海外と国内の取引、管理が1つのサービスでできる
- 実務に沿った貿易事務ができる
- 日本語、日本の商習慣に対応している
- 掛け率取引と、貿易取引を同時に行える
- 取引条件を海外、国内で同時に決められる
上記のようなニーズに応えられているクラウドサービスなら、2つのシステムを使わずに、より効率的に、かんたんに受注、商品を管理できます。
5.現地の通貨、言語に合わせたオンライン展示会
コロナ渦をきっかけに急速に需要が高まったオンライン展示会。
時間や場所にとらわれず、バイヤーや取引先が24時間いつでも発注できることから、導入しているアパレルメーカーやブランド、ECサイトが増えました。
クラウドサービスのオンライン展示会を使えば、国内外の取引先やバイヤーに向けて、新しい商品やコレクションを公開して、受注できるようになります。オンラインならではのメリットを活かした、展示会の作り方、提案ができる機能が充実しています。
下記はクラウドサービスでできる、オンライン展示会の機能、使い方の一例です。
- 展示会オーダーに対応している
- 展示会後の集計が自動でできる
- いつでもリアルタイムの受注状況を確認できる
- 動画や3D画像、360°画像をアップロードできる
- バイヤーごとにデジタルカタログ、コレクションを作成できる
- シーズンごと、コレクションごとに展示会ブースを作ることができる
- 海外のバイヤーに合わせた言語、通貨、商品情報、価格、取引条件を決められる
- 繊維の細かなところまで美しく表現できる高品質デジタル画像と多段階ズーム機能
他にも、メーカーとバイヤーのマッチング機能があるクラウドサービスなら、オンライン展示会をきっかけに世界中のバイヤーとつながるツールにもなります。
比較、検討する際に、ぜひチェックしてみてください。
また、下記の記事もあわせてご覧ください。
6.個人輸入のバイヤーとの取引に対応できる
アパレル系の受注管理システムやクラウドサービスは基本的に海外、国内ともにBtoB、企業との取引が前提になっていますが、一部のクラウドサービスでは、海外を拠点にしている個人輸入のバイヤーとの取引に対応しています。
国内取引でも、個人購入のバイヤーと取引可能で、オンライン展示会も公開できたりと、国内外を問わず、企業と個人の両方から受注できるようになっているサービスもあります。
個人も取引の対象にできるクラウドサービスは珍しく、国や規模、所属を問わず幅広いバイヤーと取引のあるアパレルメーカーに重宝されています。
7.海外からのアクセスが快適、早い
意外に見落としてしまいがちなチェックポイントが、クラウドサービスの表示速度、動作の快適さです。
日本国内からの使用には問題のない速さでも、海外からバイヤーがオンライン展示会を見たり、発注操作をするときに、画像や動画の表示が遅い、クリックして移動する動作が遅いと、バイヤーにとてもストレスを与えてしまいます。
海外のバイヤーがストレスなく取引ができる、オンライン展示会やカタログがサクサク見やすいクラウドサービスを選ぶことは、アパレルメーカーの顧客満足度、顧客体験価値の高いコミュニケーションの創出に欠かせないポイントです。
クラウドサービスの無料体験を利用して、表示速度や動作の快適さをチェックしてみるのがおすすめです。
8.わかりやすい、覚えやすい
これまで手作業や手入力で行っていた貿易事務をクラウドサービスに置き換えることで、転記や書き直しがなくなり、どうしても起こってしまうアナログなミスを防ぐことができます。
しかし、せっかくのデジタル化、オンライン化のメリットも、使い方が難しかったり、操作を覚えるまでに時間がかかるようでは本末転倒です。
クラウドサービスは誰でも使えるのが基本です。
したい事、次にする事が見てすぐわかるようになっていなければいけません。アパレルのクラウドサービスなら、貿易事務や帳票作成、受注管理の経験があれば、特別なサポートがなくても使い始められる、理解できるかどうかがポイントになります。
これも無料体験で一通り操作してみて、自社の業務に合っているか、使いやすさ、わかりやすさを確認しておきましょう。
9.導入コスト、維持費が安い
クラウドサービスは開発費や導入費はなく、月払いや年間契約のサブスクリプションが一般的です。
例えば、アパレルに特化したバックオフィスツールのDEXTREは年間契約で月々20,000円ですべての機能が使えます。
オンプレミスのシステムの場合、初期費用が数百万円はかかり、維持コストも管理費や人件費など固定費が必要です。そのため、これまで中小のアパレルメーカーにはデジタル化、オンライン化が難しかったのですが、クラウドサービスが登場してからは低コストで導入できるようになりました。
10.スムーズに移行できる
今の貿易事務、受注管理の仕事が滞ることなく、スムーズなクラウドサービスへの移行が理想的です。
クラウドサービスは、アカウントを作れば、すぐに利用を始められます。
無料体験の期間に、部署やチームで操作感をチェックしつつ、移行に向けて、初期設定や取引先への案内を進めると良いでしょう。
クラウドサービスの初期設定には、取引条件や商品情報を入力する作業があり、やや手間がかかります。
取引先ごとに掛け率や価格、通貨や言語などを登録しますが、一度入力してしまえば、後はとても楽に書類作成や管理ができます。導入後に変更したいところがあれば、そこだけを変更すれば、すべての管理、取引に適用されます。
導入や移行のサポートが充実しているクラウドサービスを選べば、社内の負担を軽減できます。WEBサイトをチェックしたり、窓口に問い合わせてサポート体制を確認してみましょう。
【まとめ】貿易業務のクラウド化で発揮できる本当の強み
アパレル業務に特化したバックオフィスツールを使えば、煩雑な貿易業務をこれまでより短い時間で、わかりやすく、効率的に進めることができるようになります。商品管理や受注管理から納品、請求、入金までまとめてクラウド化できるサービスなら、貿易だけでなく、アパレル業務全体を低予算で改善できます。
コスト削減、業務改善で得られた時間、予算といったリソースを、顧客へのフォローやプレゼンテーション、商品プロモーションの企画などクリエイティブな仕事に集中できれば、ブランドに新しい付加価値が生まれ、国内外で競争力の高いメーカーとして成長する環境を整えることができます。
クラウドサービスの上手な選び方、使い方をキャッチアップして、本来企業が持っているポテンシャル、強みを活かしたビジネスを推進していきましょう!
※ 記事内に記載しております機能には、DEXTRE(現在ベータ版)で実装中、実装予定の機能も含まれております。